今回、旅する路線は京葉線。って別に電車に乗るのが目的じゃなくて、あくまで水門を見に行きます。しかし毎回、何でこんな制約を付けているのか、ストレートに水門見に行きゃいいじゃないか、と言われそうですねそろそろ。
実は水門ってやたらとあるので、何か縛りがないことには、もうどこに行ったらいいか決められないんですよ。それと思い立ったら電車に乗って気軽に見に行けるようでないと、「みちくさ」な感じが出ないというのもありますね。うっかり気合い入れて水門を見るためだけに海外遠征などしていると、わたしのような人になってしまうので要注意です。

東京駅から京葉線の各停に乗って50分、千葉みなと駅に入る直前、左手下の方に一瞬だけ見える物置小屋のような水門、それが「中央水路2号水門」です。あまりに小さすぎて、また線路に近すぎて何が何だかわからないと思うので、今回に限っては車窓からの鑑賞はあきらめましょう。お手数ですが千葉みなと駅で降りてください。モノレールのある側の出口から外に出て、東京方面に戻る方にちょっと歩くと交差点があります。その交差点のど真ん中に、こんな感じのものが、どーん。

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言わなくてもわかると思いますが、これ水門です。どうです?いいでしょ? 初めてこれを見たとき、やられたな、と思いましたね。こんな交差点のど真ん中にいきなり水門ですよ。さすがはチバシティ、やっぱり元祖サイバーパンクであったと、何だかよくわかない称賛の気持ちで胸がいっぱいになりました。

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車なんかもほらこの通り、水門の真ん前を平気で走ってます。このストリート感覚、ちょっとやそっとで見られるものではありません。水門、托鉢とか辻説法とかしてそう。

ところでこの水門を作ったのはチバシティではなく、千葉県なのだそうですが、別に千葉県は県民をびっくりさせるためにこんな場所に水門をおっ立てたわけではありません。実はこのあたりは埋立地なのですが、埋立地の水を抜くためなのか水路がいまだに何本か残っていて、川のようになっています。その水路に高潮なんかが上がってくるとそこいらが水浸しになってしまうので、それを防ぐための水門が設けられています。1号水門から4号水門まであるのですが、たまたま一番目立つ位置にあるのがこの2号水門というわけです。というか、水門の方が先にあって、あとからこの土地が栄えたのですね。そうでなければ水門がストリート系に育ったりはしません普通。

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裏からも見てみました、って水門的にはこっちが表なのですが。裏が真っ赤なので、表のほうが地味です。しかしよく考えると、こんな風にでかでかと記号的に塗り分けられている水門も他に見たことありません。つまりこれってぜんぜん地味なんかじゃない。裏表の色の落差はかなりブッ飛んでおり、しみじみと良い作品です。

時間に余裕のある方は、この水門の両側、道路を越えた先の水門の面の延長線上に何があるか、よーく観察してみてください。「陸閘」という名の、スライドするドアが設けられていて、高潮や津波のときは道路を遮断できるようになっています。陸上の水門である陸閘はいろいろと面白いので、また別の機会にご紹介したいと思います。ところで今回の水門、ストリートビューでも笑えるほどバッチリ見えますので、わざわざチバシティまで行くのがおっくうな方は、下のマップを拡大して試してみてください。


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  • 佐藤淳一

  • Das Otterhaus

  • 1963年、宮城県生まれ。水門写真家。最近はカワウソばかり撮っている。高いところと水のそばが得意。近著は「カワウソ」(東京書籍刊)。