今回は階段のトマソン
 壁にドアに庇といろいろご紹介してきておりますが、今回は階段のトマソンです。
 1972年に発見された世界初のトマソンは、階段でした。「四谷階段」「純粋階段」という物件です。
 これは、純粋に昇り降りするだけの階段です。何のこっちゃ、と思われるかもしれませんが世界初のトマソンは、すたすた歩いていくと6~7段昇って、そこから建物に入れるわけでもなくそのまままっすぐ進んでまた降りるだけ、という物件だったのです。詳しくは「超芸術トマソン」(ちくま文庫)をご参照下さい。


 私もずっと純粋階段トマソンを探しているのですが、残念な事に一回もお目にかかった事がありません。
 その代わりといっては何ですが、「無用階段」というものをご紹介していきます。

 
 では本題。最初の写真をご覧下さい。階段ですね。ただ問題は、

「狭すぎて昇る事すら出来ない」

という事にあります。
 
 とっても無理すればなんとか昇れるかもしれません。しかし

「昇った先には何もない」

のです。一体これは何か?そう、トマソンです。
歌舞伎町で出会ったこのトマソン
 新宿歌舞伎町で出会ったこのトマソン、実は中にも階段があります。しかしこれがまた不思議で、外の段々と中の段々が揃ってないのです。このほつれ感、もうワケがわかりません。


築地で発見したトマソン
 続いてこちらは東京は中央区、築地で発見したのですが、先ほどとはまた違ったタイプの無用階段となります。

 厳密に言えば「ぬりかべ」といわれるトマソン(これはこれでまた後日ご紹介します!)と複合して「無用階段」となった物件なのですが、こちらの階段はきちんと昇る事が出来そうです。
 ところが、こちらの階段もせっかく昇っていってもその先には何もないのです。なんたる空虚さ。なんたる無用さ。

 おそらくは階段を昇った先にはドアがあったのでしょう。でももう使わなくなったのか、きっちりと塞がれています。そしてそこには、行き場を失った階段が残るのです。シュールすぎるので築地にお魚目当てで行かれた際にでも探してみる事をおすすめします。


護国寺近辺で見つけたこちらの階段
 そして今回最後となりますのが、護国寺近辺で見つけたこちらの階段。もはや階段じゃないのではないか、とも思いますが僅かに残る段々がかわいくもあり切なくもあり、という物件です。とてもとても美しい物件だと思います。私事ですがこの物件、今回ご紹介した3つの階段の中では最もオススメのトマソンです。


 今回ご紹介したトマソンは近日中にロケタッチに登録しておきますので、近所の方もしくはこういったエリアに出向かれる予定のある方は是非ロケタッチで探してみて下さい。宝探しのような気分でぶらぶらするのも楽しいと思います。そして更なるみちくさの喜びを見出して頂ければとっても有難いです。(※事務局注:トマソン講師川浪さんのロケタッチアカウントはこちらです。)





  • 川浪 祐

  • From Basshead For

  • 1975年生まれ。中学生の頃父親の書棚にあった「超芸術トマソン (ちくま文庫)」を読んでしまい、トマソン探しの人生を送るようになる。元々は音楽やフェスの話などをしていたブログも今ではすっかり路上観察一色。