東京都勝島ポンプ所
突然ですが、皆さんは「下水道」と聞いて、何をイメージするでしょうか。
みちくさ学会でも扱っているマンホール蓋のその向こうでは、一体何が起きているのでしょうか。今回は、東京都下水道局さん企画のツアーに同行させていただき、「管」、「ポンプ所」、「水再生センター」の3種類の下水道設備を事務局員大谷がレポートします。

下水を運ぶ〜勝島ポンプ所流入管渠(かんきょ)工事現場〜


東京のような大都市では、家庭や企業から排出される大量の汚水だけでなく、降った雨水の処理のために、巨大な管とその処理施設が必要になるのです。

品川区勝島周辺では、汚水・雨水の処理能力を向上させ、浸水・河川の氾濫の防止、運河の水質向上するための工事が行われています。
そのうちのひとつが勝島ポンプ所。まずはポンプ所に至る巨大な下水道管「流入管渠」の工事現場を見てみましょう。道路脇の現場に、深さ約30メートルの立坑。
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ここを降りて、シールドマシンによって掘られた下水道管を歩いてみます。



下から見上げるとこんな感じです。
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「水道管」の概念が変わる、直径が約10メートルの巨大空間。距離1メートル分の体積は、一般家庭が排出する汚水3ヶ月分の容量です。
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シールドマシンは1日に平均で約6メートル、誤差を修正しながら今日も進んでいます。

下水を流す〜勝島ポンプ所〜


下水は高低差を利用して流れていますが、一定の距離ごとに汲み上げ、また高いところから流さなければなりません。実はこうしたポンプ場施設は、すでに都内に83カ所あるそうです。
さきほどの"巨大水道管"「流入管渠」が行き着く先が勝島ポンプ所。首都高速を挟んで建てられた2棟の施設で周辺から集められた水を処理し、汚水は水処理センターへ送り、雨水は隣接する運河に放流します。
地下28メートル、記事の冒頭でもご紹介した、神殿のような水路。
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ここに設置される予定のポンプは1分間に295立法メートル(プール1杯分)の水を汲み上げることができるそうです。災害時、停電して雨水の処理が止まることの無いよう設置される発電機のタービンは、ジェットエンジン並の性能だそうです。

下水を再生する〜三河島水再生センター〜


最後は、水をきれいにし、再び川や海に戻すための施設です。今回は日本で最初の近代的処理施設のある、三河島水再生センターを見学しました。
大正11年から平成11年(つい最近までですね!)まで現役で頑張っていたポンプ場です。
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レンガ作りの雰囲気が良いですね。

次に、現役の水処理施設。奥のほうまでずっと続くのは、処理される前の汚水が入った水槽。続いて微生物のいる汚泥と混ぜ、15時間ほどかけて外の水槽に流します。
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ここまではやはり汚水らしい色・臭いがあるのですが、微生物の水槽を経た水はこのとおり!
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まだ大腸菌等が含まれているので、飲むことはできませんが、臭いもほとんどなく、油や汚れの95〜98%は微生物が処理してくれるのだそうです。この技術は100年前に確立されて以来ほとんど変わっておらず、季節や時間帯に応じて微生物の量や時間を微調整することで対応しているそうです。

わたしたちの生活とは切っても切り離せない下水道。東京の下水道管の総延長は1万5000キロ。道路・建物の下に網の目の様に張り巡らさています。
道端でもし「下水」「雨水」「汚水」の文字を見かけたら、足元を流れる下水の旅に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

なお、今回ご紹介しました、重要文化財に指定されている「旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプじょう)施設」は、11月4日・5日に一般公開が予定されています。興味のある方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。

関連リンク

東京都下水道局公式ホームページ

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