菊水湯
私は古い街並みをあちらこちらみちくさしながら最後に銭湯にたどり着くというような散歩をよくします。
いつも行ったその地で気の向くままに路地裏を散策し、最後に銭湯に入り飲み屋で〆るというのがお決まりのパターンであります。

今回は東京都文京区の本郷、旧菊坂町界隈を散歩してみました。
この辺り、昔は樋口一葉や石川啄木などの文人が多く住んでいたところで、坂に沿って古い街並みが残っている風情のあるところです。

本郷三丁目方面から菊坂をゆるゆると下って行きます。
途中で左に分岐して少し下ると菊坂と並行して走る道が菊坂下道(きくざかしたみち)と呼ばれ、それに対して菊坂自体は菊坂上道(きくざかうえみち)とも呼ばれています。
この2本の道は何ヵ所かで大小の階段で結ばれています。

菊坂階段
ここは菊坂の上道と下道をつなぐ通路のうち、いちばん大きな階段です。
脇には斜面という立地に建った半三階建て構造の木造の古い住宅があります。
坂に囲まれたこの地ゆえにいくつか見かける事が出来ます。


坂下の古い住宅地内の狭い路地裏にはあちらこちらにこんな井戸が現役で使われています。
菊坂町路地裏辻の井戸
※ここはロケタッチでは「菊坂町路地裏辻の井戸」として登録してみました。

また、東京の古い街並みを歩くとよく見かけるのがコレ。
防火用水
コンクリート製の防火用水槽。
多くは現役を退き、他の色々な用途に再利用されています。
このように水槽のまま金魚などを飼っているところもありますし、植木鉢として利用されている事も多いようです。
こんなのを見てみちくさしながらふらふらと歩いていきます。

また、起伏に富んだこの土地では色々な坂に囲まれていて、上がったり下がったりしながら、その街並みと景色を楽しむ事も出来ます。

鎧坂
ここは旧真砂町から下ってくる鐙坂。
ここを下るとすぐに最終目的地の「菊水湯」です。

同湯は黒瓦屋根の脱衣場棟と唐破風屋根のエントランスをもつ昭和37年築の昔ながらの伝統的東京銭湯。

菊水湯エントランス
入口の唐破風屋根先端の鬼がわらには屋号の「菊水」の文字が入り、軒に下がる懸魚も屋号に因んだ菊水の文様となっています。
中は昔ながらの番台のある銭湯で、浴室の奥壁には富士山のペンキ絵(男湯側・平成22年現在)が描かれています。

営業開始時間の午後3時半になると次々に近所の人がやって来る活気ある銭湯です。
ここでのんびりと湯につかってから表に出てみると、ちょうど夕刻の薄暗くなりかけた時間帯。
灯の点った銭湯の景色を眺めるのも銭湯観賞のひとつの楽しみであります。





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  • 1960年、東京生まれ埼玉育ち。現在は神奈川県藤沢市に在住。小さい頃は風呂屋のペンキ絵が描きかえられるのを心待ちにしていた子供でした。

  • 現在は路地裏散歩と居酒屋徘徊を趣味としており、産業遺産ならぬ生活遺産に興味を抱き銭湯や古建物などを見て巡っております。

  • 座右の銘は遠い温泉より近くの銭湯、かな。