地理地図検定や渋谷駅の地下化工事など、みちくさセンスの肥やしとなるようなイベントをレポートしてきた、当みちくさ学会。今回は、さらにセンスを磨こうと、みちくさとも関連の深い「地図」に関する会社を訪ねて来ました。
創業から半世紀、縁の下の力持ちとは
さて、今回伺ったのは東京都府中市の「東京地図研究社」です。東京地図研究社は、昭和33年の創業以来、半世紀に渡って地形図、航測図、ロードマップなどの出版関係の地図のほか、GIS(Geographic Information Systems=地理情報システム)など時代とニーズにあった地理情報を作成してきた、地図に関する技術企業です。「黒子、縁の下の力持ち的な会社ですね」と話すのは、同社代表取締役である塚田社長。縁の下の力持ちとは言葉の通り、担当しているのが誰であるかクレジットされないけれど、快適に生活する上で欠かせないような仕事、そんなお仕事を請け負っているという意味です。
例えば、ということでお話を聞かせてくれたのは取締役の石川さん、「これは、“現地調査”というジャンルの業務になるのですが、出口から乗り場までの最短ルートを探すとか、町の状況がどうなっているのかを調べるとか、お店の出入り口が道路のどちら側を向いているのか、とか現場に赴いて調べ、地図の基礎情報にしています」と具体的な例を教えてくれました。
つまりざっくり言って、コンシューマー向けの地図サービスを提供している企業をサポートする業務をやっているということです。
ホントざっくり過ぎるので、何か分かりやすいものを・・・、とお願いして出して頂いたのがこちら。ある地図系ムックの1ページですが、このページの地図製作は東京地図研究社。この場合は、ムックに合わせてデザインした地図原稿を提供という訳ですね。
それからこちらは同じムックの別の地図。一目で高低差が分かるように、地形表現を工夫した地図となっているようですね。
みちくさ好きの琴線に触れる地図
とは言え、クレジットされないお仕事が全てかと言うと決してそんな事はなく、自社で企画・編集・執筆された本もあります。それがこちら「地べたで再発見! 「東京」の凸凹地図」。みちくさ好きであれば、書店で手に取って見た人もいるのではないでしょうか。「地べたで再発見! 「東京」の凸凹地図」は、陰影段彩図や立体空中写真を用い、書名の通り土地の凸凹を表現することで東京の地形の隠された素顔に迫った一冊。当みちくさ学会のコンセプトは「知れば景色が変わる、みちくさのヒント」ですが、この本では身近な地形から意外な発見や驚きの事実を見つけることができます。上の写真でも渋谷が何故に“谷”なのか、何となく分かる気がしますよね。
このほか「もっと無いんですかね?」と、半ば強引に東京地図研究社さんのみちくさ的なお仕事を引っ張り出してもらいました。
あ、そうそう、「地べたで再発見! 「東京」の凸凹地図」には、3Dメガネも付いていますので、より立体的に地形を楽しむ事ができますよ。みちくさ好きなら保存用と散策時携帯用で2冊購入しちゃうくらいの気概があっても良いでしょう。
これまでの見せていただけるお仕事をご紹介頂くなかで気になったのがこちら、「地図で見る 府中市の今と昔」シリーズ、こちらは特定のクライアントから依頼を受けてのお仕事というよりも、こんな事も出来ますよ、という事業紹介の一環で製作されたということですが、1882年(明治15年)から1993年(平成5年)頃までの府中市の移り変わりを地形図で眺める事ができます。
これが明治の府中市、ちょっと見づらいですが、地図の真ん中が現在の府中駅周辺です。旧甲州街道が地図を横断し、その南を多摩川が流れています。多摩川は現在よりもだいぶ蛇行しているのは護岸工事などが行われる以前の地図であったからでしょうか。
東京地図研究社が、地図にまつわる様々な業務を執り行っている会社であること、何となくお分かりいただけたでしょうか。明治期の地図から3Dマップまで、様々な地図に携わっているのですね。さて、今回はまだまだ前半、次回は東京地図研究社の執務エリアに潜入して、実際の地図製作の現場をレポートします!
ちょっとだけ紹介、こんな感じです。それでは後半もご期待下さい。
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