好きな町、そうでもない町。何度も行く町、そうでもない町。
好きな町、そうでもない町。何度も行く町、そうでもない町。
町それぞれの面白味は、画一化されていないことだと思う。
町の個性は、個人店の個性と言い切っても過言ではないのではないか。
それから、活気のある町には必ずと言っていいほど、人知れず活性化を目的としてがんばっている人がいるに違いないと思う。それはいろいろな形として現れて、商店街の取り組みとして目に見えることもあるだろう。
駅前の、家賃も高くて多くの人が行き来する場所には、どうしても大手チェーン店が店を構えることになりがち。
チェーン店が悪いと言っているのではない。私だってチェーン店は利用するし便利だと思う。
だがもう少しチェーン店には利潤追求だけでなく、そこにチェーン店の与える影響の大きさ、存在する意味合いは何なのかを考えてもらえたらと思う。
そこまで考えている大手企業を私が知らないだけで、もしかしたら案外あるのかもしれない。知ることができたらもっと好きな企業になるに違いない。
チェーン店には個人店を潰すやり方ではなく、その町で暮らす人々がそのときの目的によって選べるような、使い分けられるような環境、個人店との共存を考えていってもらいたいというのが、私の願い。
でももちろん、半分は個人店の責任で消費者の責任でもある。




個人的には町の眺めが似たり寄ったりになるのは面白くないと思っている。
面白い個人店があることが、私がその町へ足繁く通う大きな理由のひとつだと思う。

人形町には三軒の老舗喫茶店が残っている。
最も有名なのは駅から数分歩いたところ親子丼でこれまた有名な”玉ひで”のお隣にある快生軒だが、駅前にも二軒横断歩道を挟んで向かい合わせに喫茶店がある。
カフェテラスワコーと、今回ご紹介するRON(ロン)だ。
私はこの三軒とも何度かずつ入ったことがあるのだが、なにしろ平日の中途半端な時間でも人で賑わっていて、驚いた。一度きりのことではなくて毎回。
入らなくても外から覗くと、どの店もたいてい賑わっている。人形町で喫茶店に入るたびに、嬉しい気持ちになるのだった。
老舗喫茶店は、まだまだ人々に求められている存在だ。そう心の中で確認する。
みんな、真新しいきれいな店だけじゃなくて、30年、40年、50年と経った渋い店の雰囲気や食べ物や飲み物や何かが、好きなのだと。




この町に限って言えば、駅前に目立っているはずのチェーンのカフェや喫茶店がまるで目立たない。あるにはあるのだが、完全に霞んでいる。
人形町で仕事をしたり暮らしたりと毎日生活している人々は、いつだって老舗の喫茶店を利用している。とてもうらやましい環境だ。




RONのマスターに聞いたところによると、年の後半だけで8月にせともの市、10月にべったら市、10月10日は水天宮のてんてん祭、10月半ばには人形市、12月にもちつき大会、その他商店街の催しが目白押しだ。マスターに取材を申し込んでも忙しい忙しいと何度も言われたくらい。昼間は店が混んでいて忙しいからと、取材は日が暮れてから行った。
催しの多さの理由は、ひとりアイディアマンの商店街の店主がいるからだとか。
下町と呼ばれる、他の町が羨むような個性を元々持った町でも、それに甘んじている訳ではなくて、やはりちゃんと活性化を考えている人がいるのだ。
人形町へ遊びに行ったら是非、個人店を満喫し休憩には老舗の喫茶店をセレクトしてみてください。

次回後編に続きます。後編ではお店のマスターからお聞きしたお話をご紹介します。




●RON(人形町)
中央区日本橋人形町1-19-6
店舗の希望により電話非掲載
地下鉄日比谷線/都営浅草線 人形町駅すぐ
9:00~21:00
日曜定休
ブレンドコーヒー400円
クリームソーダ 550円