喫茶RON(ロン)のマスター矢島さんは、矢島家がこの地で商売を始めてからの12代目の店主。
先代11代目が45年前に喫茶店を始めた。
矢島家の歴史について書かれた資料を貸していただいたので、引用する。
『過去帳から調べてみると、1780年(江戸天明期)ごろからといえば、およそ220年前から人形町にいたという。今は喫茶店だが、最初の江戸期は馬具商という商売であった。馬具商というのは、武家総合雑貨業といっていいだろう。例えば、武士が使用する刀、なぎなた、よろいかぶと、馬の鞍、鐙(アブミ)などを扱う商売で、これらを総称して馬具商という具合に呼んでいた。(中略)昭和40年から愛犬の名前と字画がいいということで「ロン」という名で喫茶店を始めて今日に至っているが、馬具商の後両替商となり、明治期から唐物商(洋傘などを扱う洋品店)として営業していた。』
「洋品店がたちゆかなくなって、先代が喫茶店を始めたんですよ」と矢島さん。
矢島さんは27歳のとき福岡からこの町へ出てきて店で働き始め、36年が経った。今年の7月に亡くなった義父である先代の後を継ぎマスターになった。
僕は先代のように几帳面ではないんですよと笑う。「先代は、この店は自分が作ったという自負があるから、きれいにしろ!って口酸っぱく言っていました」
矢島さんは先代のようには掃除はできないよと笑うが、店は十分手入れされていて綺麗だ。
矢島さんの他に、何十年とここで働くやはりベテランのスタッフ達で店は切り盛りされている。皆、年齢は60歳以上。
90年代の初頭にバブルが崩壊し、日本全体が景気の良かった時代が終わった。
当初は“コーヒーとサンドイッチの店”として始まった喫茶店であったが、この頃このままの営業形態では生き残ることができないと、メニューを増やした。今では、自慢のコーヒーの他には、生姜焼きやスパゲッティー、カレーなどの後から増やしたメニューが人気。店を支えている。
「大変じゃない商売なんてないけどね、大変な仕事だよ」と語る。それでもこだわり続けるところは、品質を落とさないことだという。「来てくれるお客さんがいるから、品質を落とすのは絶対にダメ」と続ける。安ければ安いほどいいという商売とは同じ土俵に上がらない、お客さんの選択だと話す。
いつも思うのだが、喫茶店のクオリティーは店主の頑固さで維持されている。
だから喫茶店には頑固なマスターが多いのだ。
歴史は今に繋がっていて、人形町の駅前にはそれをリアルに感じられる場所がある。
人形町にもかつてきっとポカポカと馬が歩いていて、この場所に着物を着た武士が刀を買いに来たり、馬の鞍を見に来たりしていたんだと想像した。
矢島さんのお父さんが”シックで派手さのない店がいい”という信念を持って作り上げた店は、古びることなく町に溶け込んでいる。
参考文献:「にほんばし人形町新編」平成14年7月22日発行(人形町商店街協同組合編)
●RON(人形町)
中央区日本橋人形町1-19-6
店舗の希望により電話非掲載
地下鉄日比谷線/都営浅草線 人形町駅すぐ
9:00〜21:00
日曜定休
ブレンドコーヒー400円
クリームソーダ 550円
矢島家の歴史について書かれた資料を貸していただいたので、引用する。
『過去帳から調べてみると、1780年(江戸天明期)ごろからといえば、およそ220年前から人形町にいたという。今は喫茶店だが、最初の江戸期は馬具商という商売であった。馬具商というのは、武家総合雑貨業といっていいだろう。例えば、武士が使用する刀、なぎなた、よろいかぶと、馬の鞍、鐙(アブミ)などを扱う商売で、これらを総称して馬具商という具合に呼んでいた。(中略)昭和40年から愛犬の名前と字画がいいということで「ロン」という名で喫茶店を始めて今日に至っているが、馬具商の後両替商となり、明治期から唐物商(洋傘などを扱う洋品店)として営業していた。』
「洋品店がたちゆかなくなって、先代が喫茶店を始めたんですよ」と矢島さん。
矢島さんは27歳のとき福岡からこの町へ出てきて店で働き始め、36年が経った。今年の7月に亡くなった義父である先代の後を継ぎマスターになった。
僕は先代のように几帳面ではないんですよと笑う。「先代は、この店は自分が作ったという自負があるから、きれいにしろ!って口酸っぱく言っていました」
矢島さんは先代のようには掃除はできないよと笑うが、店は十分手入れされていて綺麗だ。
矢島さんの他に、何十年とここで働くやはりベテランのスタッフ達で店は切り盛りされている。皆、年齢は60歳以上。
90年代の初頭にバブルが崩壊し、日本全体が景気の良かった時代が終わった。
当初は“コーヒーとサンドイッチの店”として始まった喫茶店であったが、この頃このままの営業形態では生き残ることができないと、メニューを増やした。今では、自慢のコーヒーの他には、生姜焼きやスパゲッティー、カレーなどの後から増やしたメニューが人気。店を支えている。
「大変じゃない商売なんてないけどね、大変な仕事だよ」と語る。それでもこだわり続けるところは、品質を落とさないことだという。「来てくれるお客さんがいるから、品質を落とすのは絶対にダメ」と続ける。安ければ安いほどいいという商売とは同じ土俵に上がらない、お客さんの選択だと話す。
いつも思うのだが、喫茶店のクオリティーは店主の頑固さで維持されている。
だから喫茶店には頑固なマスターが多いのだ。
歴史は今に繋がっていて、人形町の駅前にはそれをリアルに感じられる場所がある。
人形町にもかつてきっとポカポカと馬が歩いていて、この場所に着物を着た武士が刀を買いに来たり、馬の鞍を見に来たりしていたんだと想像した。
矢島さんのお父さんが”シックで派手さのない店がいい”という信念を持って作り上げた店は、古びることなく町に溶け込んでいる。
参考文献:「にほんばし人形町新編」平成14年7月22日発行(人形町商店街協同組合編)
●RON(人形町)
中央区日本橋人形町1-19-6
店舗の希望により電話非掲載
地下鉄日比谷線/都営浅草線 人形町駅すぐ
9:00〜21:00
日曜定休
ブレンドコーヒー400円
クリームソーダ 550円
- 塩沢 槙(しおざわ まき)
- http://www.makishiozawaphotography.com
- 塩沢槙 写真執筆事務所ブログ
- 撮影業・執筆業。1975年生まれ、東京都出身。1999年~2000年ロンドンへ留学。帰国後、大学在学中より仕事を始める。近年は東京の街や文化、日々の生活・暮らしに特に興味を持ち、書籍の制作を中心に活動中。2007年『東京プチ・ヒーリング』、2009年『東京ノスタルジック喫茶店』、2010年
『東京・横浜 リトル・カフェ物語』を河出書房新社より上梓。2011年7月、撮影・執
筆共に手がけた著書4冊目となる『東京ノスタルジック喫茶店2--郷愁の喫茶を訪ね
て』が河出書房新社より発売になり、好評発売中。