新川水門
東北新幹線が新青森まで全通しました。何もこんな寒い季節に青森に行かなくても、と思うのはわたしが夏生まれだからなのだと思います。ネコも夏に生まれたやつは毛が薄くて寒さに弱いそうです。さて、その東北新幹線からも、いくつか水門が見えます。今回はその中で最高に気になるやつを訪ねてみることにします。
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東北新幹線が福島を通過する直前、左の車窓に川と堤防が大きく広がりますが、いつもわたしの目にはこんな感じに映っています。視線が水門にロックオンするので、風景は流れていますが、水門だけは止まって見えるわけです。みなさんもこういうことってありませんか。選択性動体視力とでも言うのでしょうか。

こんな感じで何年もロックオンし続けたこの水門、最初はごく小さいものと思っていたのですが、よくよく写真で見るとしっかりした水門です。しかし、見に行こうにも福島で降りる用事がなくって困ります。そこで早春のある日、『青春18きっぷ』を使って、福島までこの水門を見るためだけに出かけました(日帰り)。現地滞在時間の何倍も電車に乗るのって、18才ぐらいの頃は得意中の得意でしたが、40代も後半になると何だか人生の無駄使いをしているようで、ちくちくと心が痛みます。

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福島駅で降りて、あの水門とおぼしき方角に歩き出します。いきなり目に入ったキリスト看板によると、神はわたしのこの人生の無駄遣いも見ておられるらしい。だったら今後ともよろしくお願いしたいです。

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住宅地を抜けて、水門のほぼ対岸に出ました! やはり近くで見るとでかかった。上屋の塗装がすすけて、うらぶれた感じがするのがちょっと気になりますね。とにかくそばまで行って様子を見ましょう。

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ちょっと遠回りして対岸に渡り、堤防の上を歩いて接近します。しかし真横から見ると水門って変な形ですね。張り出し感が給水塔っぽくて、不安定の魅力が発生しています。

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おお!このときはじめて長年見続けたこの水門の名を知りました。新川水門、やっぱり70年代ものでしたか。コンクリ打ちっぱなし、装飾っぽさのないモダニズム構造物は、まさに70年代の逸品といえます。

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これといって特徴のないローラーゲートがぽつねんと、春の日差しを受けてたたずんでいます。ゲートのくすんだブルーも、空の色と同化してしまいそう。

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この何の変哲もない感じ、実に見事です。こういう水門にわたしはなりたい。

さて、今年の夏に福島を通過したとき、新川水門はシートがかけられており、改装中のように見えました。ひょっとすると今はもう別の姿をしているかもしれません。


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  • 佐藤淳一

  • Das Otterhaus

  • 1963年、宮城県生まれ。水門写真家。最近はカワウソばかり撮っている。高いところと水のそばが得意。近著は「カワウソ」(東京書籍刊)。