ホテル日航大阪。この完璧なるミラーとの共演。
突然ですがここでクイズです。
エレベーターファンの人口とエスカレーターファンの人口では、どちらのほうが多いと思いますか?
数えたわけではありませんが、私の実感から言わせてもらうに、それは9対1で(もっとかも)圧倒的にエレベーターなのです。当学会にはさまざまな興味深いジャンルの講師の方がいらっしゃいますが、「やってる人が少ない」度でいきますとけっこう自信がある私です(タモリさん認定「日本にひとりしかいない趣味」換気口鑑賞には負けますが)。

そしてそれはいったいなぜなのか、エスカレーターのエレベーターに及ばなさというのはどこなのかについては、常々気になっているのではありますが、これ、当の好きな本人にしてみたら、ぜんぜんわからないのですね。エスカレーターのほうが、素敵じゃないですか。動きがよくみえるし。乗ると景色も変わるし。ナナメだし。名前もこう、オシャレでさわやかな感じです、エスカレーター。嗚呼エスカレーター。

そしてまた突然ですが話は変わって、「格好いいエスカレーターがあるビル」というのは、外から見ても匂いでわかるようになってきた私です。特に、古めで渋い、丸みのあるボディのタイプ、これを私は「丸ボディ」と呼んでとりわけ愛でているのですが、これがあるビルというのは実にいいビル。

たとえば新橋駅前ビル。

嗚呼、いいエスカレーターです。渋いですナァ。
この21世紀の世の中でなんともひとつの宇宙を醸し出している駅前ビルというものが、どのような時代にどのような経緯で建てられたかということについて、残念ながら私はまったく見識がないのではありますが、エスカレーターを見れば「ああ、ここも、その時代であったか」ということがよくわかります。

どういうことかと申しますと、この丸ビルは順番に進化していまして、いちばん古いのが、新橋駅前ビルのような「全照明」タイプ。つぎに、乗り降りの部分だけ照明がついている「部分照明」タイプ、これは本日のトップの写真のものがそうです。そしてすべて透明になった「全透明」タイプ。

大阪駅前ビル1号館の全透明型。大阪は駅前ビルが4号館までそろって駅前にそびえていることをもっと世界にアピールしても良いのではないでしょうか。確認したところ、エスカレーターは1号館と2号館が丸ボディ全透明型、3号館と4号館はより最新の薄型でした。

そして、最近訪れた、桜木町駅の目の前のこれもなんともイカした感じのビル、ぴおシティに(なにせ「ぴおシティ」ですよ、ぴおシティ。みなさん!)ここにも超いいかんじの丸ボディがありました。

うおお全不透明型!これはレア!


ついでに、この男の子も…レア!!

ハァ、素敵。と思って気づいたのですが、これらのビルたち、エレベーターについてはどうかというと、「いいエレベーターがあるビル」とはちょっとズレているのです。いわゆるレトロでかっこいいエレベーターといいますと、有名な銀座の奥野ビルといった、建物としてもうっかり文化財指定されちゃいそうな歴史あるビルが多いのです。そして、エレベーター自体も歴史的な価値、ありありな、ボタンだったり、手動式だったり。

そういった歴史の片隅にひっそりと取り残されたかのようなビルには、しかし、エスカレーター、ないんです。悉く。そんなスペースはない。エスカレーターがあるのは、いまでいう「ちょっと残念」な駅前ビル。
駅前ビルの独特の格好よさと重要性を確認するとともに、この世の中にエスカレーターファンが少ない一要因が少し明らかになったような気持ちです。





  • 田村美葉「東京エスカレーター」管理人

  • 東京エスカレーターMANIAX

  • 1984年うまれ、石川県出身。大学入学を機に上京。以来、主にエスカレーターに乗って浮かれたり、かっこいい橋脚を追って延々と高架下を歩いたりしている。高架橋脚ファンクラブ会長。