さまざまな視点をもって“みちくさ”を続けられている、みちくさ講師陣の皆さんですが、街を歩き観察する上で注意しているポイントなどはあるのでしょうか?
 今回は、みちくさ講師陣の皆さんに“みちくさ”する上での事前準備やツール、そして今年の総括と来年2011年の抱負についてお聞きしました。みちくさ学会を見て、もし「お正月は帰省ついでに地元をちょっと“みちくさ”してみようかな?」と考えている人がいましたら、以下のポイントを参考にしてみてはいかがでしょうか。


みちくさ的活動で、参考にしているサイトや文献は?


“まずはインターネットで検索”なんて参考資料探しは、ネット時代の定番ですが、みちくさ講師陣が参考にしているサイトなどはあるのでしょうか?

各種地図サイトはもちろんですが、gooが公開している昭和22年と38年の航空写真をよく見ています。
私の担当カテゴリに関してであれば、バス会社各社の路線図ページを頻繁にチェックしています。最近は、各社とも路線図に様々な工夫が凝らされ、路線図自体がある意味芸術的な完成度を見せている会社もあり、見ていて飽きません。文献はいろいろですが、最近のお薦めは『川の地図辞典』でしょうか。(バス停講師 岩垣 顕さん

各都道府県の神社庁のサイトなどです。また、おおむね定期的に「蕃塀」で検索をかけてどのような記事が出ているかはチェックしています。(蕃塀講師 蕃塀マニアさん

マンホール蓋サイトの古典でありバイブルである「マンホール図鑑」というサイトをよく利用します。あとは、マンホール蓋ブログの大先輩である駅からマンホールさんのブログ「駅からマンホール」をはじめ、様々な人のブログを参考にします。

さらにマンホール蓋収集に一番大切な情報である位置情報をみんなで集めるため、TwitterとGoogleMapを連動させたサイト「マンホールマップ」を@dotnsf さんに作ってもらいました。このサイトは、位置情報付のマンホール蓋写真をメールで投稿すると、位置情報を元にGoogleMapに表示してくれるのです。
大まかな位置がわかるようになりましたので、大幅に蓋収集の効率があがりました!
今年の7月末にオープンしたあとすでに950枚をこえる情報が集まっていますので皆様もご利用下さい。(マンホール講師 森本 庄治さん

書籍「看板建築」藤森 照信 (著), 増田 彰久(写真)はバイブルですが、基本的には現場に行って目視するのを楽しみにして活動してます。
看板建築メインのサイトはあまりないようですが、街歩き系のサイトは何気なく看板建築を掲載しているので、ネット巡回は楽しみがあります。(看板建築講師 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)さん

ウェブサイトでは各公衆浴場組合のHPですね。
後は個人でやられている銭湯関連のHP、ブログなどです。
書籍では昔刊行された全国公衆浴場一覧というのをよく参考にしています。(銭湯講師 まぁやぁさん

「超芸術トマソン」(赤瀬川原平著/ちくま文庫)「路上観察学入門」(赤瀬川 原平, 南 伸坊, 藤森 照信編/ちくま文庫)。当たり前ですが、私の教典です。
「東京計画地図」(東京都都市整備局 協力 (著) /かんき出版)。これから新しく変わる町=トマソン物件があるかもしれない、というヒントになります。
OHYAMA Ken.com。団地、ジャンクション、工場、高架下建築・・・様々な物の見方を提示してくれるサイトです。(トマソン講師 川浪 祐さん



みちくさ的活動で、利用しているツールは?


GPS付きケータイ電話に、スマートフォンの普及もあって、外出先でも地図を参照することが容易になりました。みちくさ講師陣のツール利用状況は?

もう最近は圧倒的にGoogleMapです。ただ僕の携帯は普通のやつなので、地図は家でイラストソフトを使って何枚かの地図を合成したものをプリントアウトして広範囲に対応できるようにして使ってます。
そのうちもうすこしデジタルな地図の使い方もしようかと検討中ですけど、やはり記事を書くときなんかに紙の地図は便利なんですよね。
あとは、小さなメモノートと携帯(もちろんメモ用)ですかね。気になったことはその場で書くことも多いです。(坂道講師 くふらてさん

・デジタルはiPhone。手の平に地図がある、というのはやはり便利です。
・アナログだと自転車。自分はPacific CARRY ME2、Tartaruga Type Fといった折り畳んで電車に持ち込むのが容易な自転車を持って散策する事が多いです。移動範囲が広がってとても便利。(トマソン講師 川浪 祐さん

デジタルなものは、あまりありません。(デジカメ程度かな・・・)
アナログでは、最近スタンプ帳を持つようにしています。駅や博物館、寺社、その他もろもろ、スタンプを設置している場所って、結構ありますね。ただ押すだけで、だから何?、てな感じですが。(バス停講師 岩垣 顕さん

私の場合はiPhoneで地図上に事前に住所を登録して実際の訪問時に役立てています。
やはり初めて行った地で路地裏の銭湯を発見するのはたいへんですのでとても助かっています。
やはりiPhone使用でGoogleストリードビューも事前に銭湯の姿が確認できるのもいいですね。
「おっ、ここは破風屋根のエントランスじゃん」って感じです(笑)(銭湯講師 まぁやぁさん

iPhoneが「簡単に撮れる」「いつでも手元に持っている」「GPSタグが自動でつく」「そのままネットにアップしやすい」ためメインツールです。GPSロガーも使いますがこれまたiPhoneアプリ(EveryTrail等)で代用できたりします。
iPhoneといえば「東京時層地図」は古地図で古い道筋や商店街をたどれるのでこれまた重宝してます。 逆にいえばiPhoneがなければ看板建築コレクションを始めていなかったかもしれません。それくらい依存してます。(看板建築講師 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)さん

神社を探す際は、事前に地図で入念に下調べはします。
ですが、ここからが重要なのですが、その地図を直前に頭にある程度インプットしてからは、本当に迷ったとき以外は、そういう情報を見ない(頼らない)のを基本としています。
実地で探す行為が、眼前に広がる風景を最もつぶさに観察することになるからです。
また、そういう行為を続けると独特の『カン』が身に付き、結果迷うことも少なくなります。
したがって、カーナビなどのデジタル機器は私の場合は無用です。
私の目から見ると、画面を見ながら目的物を探す行為は滑稽にしか見えません。
せっかく眼前にさまざまなヒントが見えているのに気がつかないからです。
ライブドアさんには申し訳ないのですが、本当にみちくさを楽しむ人は
そういうツールとは無縁な人なのではないかとさえ感じています。(蕃塀講師 蕃塀マニアさん

Apple iPhone 3GSですね。GPSが使えるので、マンホール蓋の位置が記録できるようになったので、助かっています。
あとは、紙の地図です。マンホール蓋は原則は市町村ごとにありますので、市町村合併前の古い地図を利用しています。(マンホール講師 森本 庄治さん



利用しているカメラや撮影のポイントなどは?


みちくさ学会の記事エントリーは写真と文章で構成されていますが、皆さん一体どんなカメラで風景を切り取っているのでしょうか。

NIKON D80(18-200mmと10-20mmのレンズ)、コンデジはソニーのサイバーショット。動画はコンデジで撮ってます。コンデジないときは、携帯付属のカメラも使用。(ローテク看板講師 八画文化会館さん

PENTAXのK200Dというデジタル一眼にDIGITAL KINGのワイドコンバージョンレンズを付けています。
・他にはPanasonic LUMIX FX-500とOLYMPUS μ-TOUGH6000も使います。前者は25mm広角、後者は防水対衝撃で荒天時も使えるから、という理由です。(トマソン講師 川浪 祐さん

カメラの技術・知識が全くなく、おそらく「みちくさ学会」で最も写真がヘタな講師かと思います。
カメラはメモ帳代わりという感じに使ってまして、風景よりも、案内板、説明版、標識みたいなものを手当たり次第撮っています。(バス停講師 岩垣 顕さん

外観はCanon EOSのD10という古い機種を使っています。
後はコンパクトデジカメのCanon IXY110ISというのを使っています。
銭湯を撮るのに大きなカメラで、というとかなり怪しい人になってしまいます。ですのでコンパクトデジカメの方が格段に使用頻度が高く、サッと出してサッと撮るといった感じですね。
後は携帯のデジカメですけど、これはいくら画素数が上がっても米粒のようなレンズじゃどうしようもありませんね。いっそデジカメに携帯つけてくれないかな、と思っています(笑)(銭湯講師 まぁやぁさん

私の蕃塀調査の場合、ほんとに調査に近い形で撮影します。カメラは手ぶれを避けるため、ある程度のボディを持つものを使用します。
撮影は
 1 鳥居から本殿までの社殿構成が分かる写真群
 2 蕃塀の正面と裏面と両側面、基礎や屋根など個別細部の部分写真
 3 蕃塀の全体を一目で分かる斜め写真
 4 1mの物差し(折尺)を入れた正面写真
などをワンセットとしています。
大社では人物が入っても匿名性を維持できますが、一般の神社で人物が入ると匿名性が担保されない可能性が高いので人物などは極力入れないよう配慮しています。(蕃塀講師 蕃塀マニアさん

Sony α350+Vario-Sonnar T* DT 16-80mmで撮影しています。
最近αシリーズにも、GPSがついたα55が出たので密かに狙っています!
撮影で気をつけているポイントは、天気です。当日の天気はもちろんのこと、数日前から天気図とにらめっこで、乾いた状態の蓋を撮れるチャンスを狙っています。
さらに撮影時には、太陽の位置が重要です。せっかくの蓋写真に自分の影が映らないよう注意を払います。(マンホール講師 森本 庄治さん

基本iPhoneですが、SonyのNEX-5を併用してます。
「みつけた看板建築はすべてiPhoneで押さえる」「とても気に入った物件はNEXでも撮影する」という感じです。標準のパンケーキレンズが広角なので道路の反対に回らずとも撮影できて便利です。
最近ではカシオのEX-H20Gが「GPSタグがつき、GPSロガーでもあるデジカメ」ということで、気になりまくっています。これは絶対に「みちくさ専用機」だと思います。(看板建築講師 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)さん

私の使っているカメラはCanon 5Dです。
使っているレンズは、28―105ミリ、50ミリマクロ、20ミリ、200ミリ、マクロリング、です。
必ず三脚と、レリーズを使います。ストロボは一枚も使いません。
気をつけていることは、寄ったり引いたりしている写真が混じっていること。
私は普段から本を作っているので、枚数を組み合わせてページを完成させるという感覚はいつも持っています。
そこには、人間の目ですごく近づいてみたり、遠くから全体を見たりという、普段自分の目で見ているような自然な形で写真におさめるよう気をつけています。
一枚一枚が断片のような形で、組み合わせてひとつの場所を見せることを心がけています。
それと、必ず人とコミュニケーションをとりながら、写真を撮ることも自分に課しています。
ネットではマスターなど人物の顔は載せていませんが、取材ではなるべくそこにいる人を撮るようにしています。
お店にお客さんがいる場合は聞いてなるべくそのままお客さんのいる状態で撮るようにしてます。
人にカメラを向ける場合は、必ず許可を取ってからやっています。(純喫茶講師 塩沢 槙(しおざわ まき)さん


 みちくさ学会 講師陣に聞く「みちくさのコツ」はいかがでしたでしょうか。どれも参考になるコメントばかりではないでしょうか。アンケートはこれで終わりではありません、明日はみちくさ講師陣に聞く「2010年のみちくさで印象に残ったことは?」、「2011年のみちくさに関する抱負は?」という質問への回答を掲載します!

 また、みちくさ学会では「読者投稿」も随時募集しています。「現在の講師カテゴリにないけれど、みちくさの新たな視点として、こんな様な観察対象や観察方法があるよ!」といった、気づきを与えてくれるようなネタがありましたら、投稿をお寄せください。

 駅から学校や会社へ向かう道すがら、ちょっと気になっている風景やスポットを「街の中にはこんなに面白い風景がある」「この鑑賞眼を伝えたい」というテーマをお持ちの方は、メールの件名に【みちくさ学会 読者投稿希望】と記載の上、こちらのmichikusajp@livedoor.comまで、お問い合わせください。