何度も言っているように換気口鑑賞というのは日本で私しかやっていない趣味である。
しかも斯様にプチプチとした換気口が存在するのは日本だけなので、必然的に世界で私しかやっていない趣味でもある。
私自身は、決してそれを誇らしくなど思っておらず、寧ろもっとこの趣味を広めたいと思っているのだが、世間というのはあまり変人には同調してくれないものである。「半年早かったかもしれない」と言われ続けてもう3年くらい経つ。

ただ、一人しかやっていない趣味であるがゆえの利点もある。

例えば、あなたが写真をはじめて間もなく、花とか山とかを撮り始めたとする。とくにこだわりもなく好き勝手に撮っているうちは良いのだが「どうせならもう少しちゃんと勉強しようかな」などと思い始めると罠にはまる。誰もが撮っている被写体は、それだけ大勢の人が一家言持っている。
ちょっと詳しそうな人に相談しようものなら、やれ露出がどうだ、絞りがどうだ、このレンズがいい、この作例をご覧なさい、これ買うくらいならニコンのこれ買いなよ、などと矢継ぎ早にいろいろとアドバイスを押し売りされてしまう。

その点、換気口は撮っているのが私しかいないのだ。私が「これが一番美しい撮り方だ」といえば、それが正解になる。
私は、換気口は建物に正対し真下から撮るのが最も美しいと考えている。出来る限り正面から撮ることにより、換気口の高さが最も強調され、夜の滑走路にまたたく誘導灯のように見える。
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そして一人で決められるのは撮り方だけではない。理想の建物の色から、換気口の形、換気口のメッカは新横浜だというところまで、全部自分で決められる。

だが内心では、こんな私を脅かす若人が出てくることを密かに期待している。正面派の私に対して、横から撮ることを是とするイキのいい若者が噛みついてくるのを待っている。
なんだか全盛期の千代の富士みたいなコメントだが、これは換気口の話である。




  • 前川ヤス

  • がらり~換気口鑑賞団 

  • 1972年生まれ北海道出身。2007年春頃、電車の車窓から見える換気口配列の美に魅せられ、「日本に一人しかいない趣味(タモリさん認定)」換気口鑑賞を始める。一児の父。