トマソン探索ツアー新橋界隈編
  前回は新橋駅から東、築地や銀座をぶらぶらする3km程度のトマソン探し路上観察コースをご紹介しましたが、今回は逆に新橋から西方向へと向かってトマソンやら何やらを探し回ってみる小さな旅をご紹介します。オフィス街の谷間に現れるいろんな物件をお楽しみ頂きたいのです。
 今回ご紹介するスポットは全てロケタッチに登録してありますので、携帯電話やスマートフォン片手でロケタッチにアクセスしながら巡ってみると場所もわかってタッチもできてより楽しいと思います。


 新橋駅SL広場にどどんとそびえるニュー新橋ビル。この裏手の路地を巡るところから今回の旅のスタートです。

 飲食店が数多く立ち並ぶいかにも新橋らしい町並みを南に進んでいきますと、新橋4丁目になります。そしてそこで見つけたのがこちらのトマソン。


 建物があった痕跡を白く塗りたてた原爆トマソンです。見事。なんで白く塗ったのかは全然分かりませんが、こういう不思議な要素の蓄積がトマソンたらしめているのでしょう、きっと。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/419906/ 新橋4丁目原爆トマソン>

 続いては西に向かいます。西新橋方面に向かうと、みちくさ学会「史跡」カテゴリで植村さんが1回目の記事として取り上げた「新橋」の記事とリンクするような道のりとなりますので、そちらも合わせてご覧頂いた上でこの記事のルートと混ぜてみるとより一層奥行きのある旅となりますよ。


 西新橋の某牛丼チェーン店の側面にあるのはまたもや原爆タイプのトマソン。しかもかなり独特の形状です。一体、どういう建物があったのでしょうか?今となってはこのトマソンしか手掛かりはないのですが、トマソンとしてというよりも取り壊されてしまった建物そのものが貴重だったのではないかしら、とちょっと寂しい気分になったりもするもです。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/230877/ 西新橋すき家の原爆トマソン>


 そして実はこの物件のすぐそばには別のトマソンがあり・・・ました。「ました」というのは既に建物が取り壊されてしまっていたので二度と見る事はできないからなのですが、トマソン鑑賞という意味ではこのリスクは避けられないのが悲しいのです。
 
 ある日突然なくなってしまうかもしれない、そんな儚さとトマソンらしいとぼけた佇まい、その相反するようなものを併せ持つのがトマソンなのだなぁ、としみじみ。

上の写真が既に姿を消した物件なのですが、それはそれは見事な無用庇トマソンでした。正面の入り口を塞ぐというのは一体どういう事なのだ?という突っ込み所満載な所が大変に素敵でした。とても残念。


 更に南下しますと有名な愛宕神社が。みちくさ学会では「坂道」カテゴリでくふらてさんが「港区にある高低差25.7mの坂道」という記事で丁寧に紹介されていたスポットですね。
<ロケタッチURL: http://tou.ch/spot/324899/ 愛宕神社)>

 また、トマソン的にも非常に重要な地名です。なぜならばトマソンで唯一、地名がそのままトマソンを現すその名も「アタゴ」発祥の由来となったのがこの東京都港区愛宕であるからなのです!

 ではアタゴトマソンってどういう物なの?という至極当然な声もあるかと思いますが、今回は敢えてご紹介しません。

「なんじゃそら!」
「金返せ!」
「ぼったくりか!」

というようなご意見もあるやもしれませんが、まだきちんとご紹介してないタイプなので、今後しっかりとご紹介させて頂きたい!という気持ちなのです。すいません。


 愛宕神社界隈にはなかなか面白いトマソンがいくつかあります。

 まずこちら。愛宕神社の向かいあたりにあるのですが、空き地の奥に佇むビルにはまたもや原爆タイプのトマソン。

 しかし、今までの物件と違うのは、かつてあった建物をかたどっているものが、植物。とてもレアです。ずいぶんとトマソンを探して歩いているのですが、このように植物によって建物の形を構成しているのは本当に珍しいです。少なくとも東京23区内ではなかなかお目にかかれないと思います。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/419913/ 西新橋3丁目植物型原爆トマソン>


 このあたりには愛宕神社をはじめ、多くの社寺仏閣があるのですが、その中の一つがこの猿寺。杉田玄白のお墓があるお寺です。
 
 そのお寺さんの外壁右手側にあったのがこの小さなトマソン。縦長でお勝手があったのか看板があったのか定かではないのですが、塗装の色がここだけ違っていて何かの痕跡が残されてるようでした。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/436681/ 猿寺プチ原爆トマソン>


 3つ目はこちら。愛宕から虎ノ門方面に向かう途中にある原爆タイプのトマソン。この形状は、かつてあった建物が看板建築だったのではないか、と想像させてくれます。

 看板建築が何か分からない方いらっしゃいますか?そういう方は直ちにみちくさ学会の「看板建築(http://michikusa-ac.jp/archives/cat_66484.html)」カテゴリをご一読なさる事をおすすめします。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/425128/ 虎ノ門看板建築型原爆トマソン>


 愛宕神社を後にして虎ノ門までやってきました。路地を歩いていると高所ドアがありました。

 元々はここから昇降していたのであろう痕跡として、ドアの前にはきちんと跳ね出しスラブがあります。が、階段らしきものはきれいさっぱりなくなってしまっています。なんとも清々しいルックスで楽しませてくれます。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/436672/ 虎ノ門高所ドアトマソン>


 虎ノ門三丁目交差点方向に向かいますと、今度はこんな建物が。各所の開口は塞がれて「ぬりかべ」状態となり、正面の玄関部分は庇が撤去されたのにその跡と柱、梁がぽつねんと残るシュールな光景となっております。

 おそらくはどこかのタイミングで取り壊されてしまう物件なのでしょうが、なんとも言えない風情があって本当に素敵です。
<ロケタッチURL:http://tou.ch/spot/436690/ 虎ノ門庇跡原爆トマソン>


 なぜこうもトマソンが多いのでしょうか、このあたり。

 それに関しては「マッカーサー道路」の存在が一因になっていると思います。

 マッカーサー道路とは何か。これは環状2号線のうち虎ノ門~汐留あたりの部分を指す通称で、60年以上前に立案された道路の新設計画です。

 道路といっても地上ではなく、地下を通るもので今現在非常に大規模な工事が行われています。

 この大規模計画に伴って近辺の老朽化しつつある建物を解体して再開発しよう、という動きが民間レベルでもあるのではないかと推測すると、このように徐々に歯抜けとなって原爆タイプのトマソンが大量発生したのではないか、とあくまでも勝手な想像なのですがそう思うのです。

 と、いう事は今ご紹介した物件の数々も、気付いたら全てなくなってしまう、という可能性も否定はできません。ロケタッチを見ながら現物を観に行くのはお早めに!・・・ずーっとこのままで何も変わらなかったら本当にごめんなさい・・・。





  • 川浪 祐

  • From Basshead For

  • 1975年生まれ。中学生の頃父親の書棚にあった「超芸術トマソン (ちくま文庫)」を読んでしまい、トマソン探しの人生を送るようになる。元々は音楽やフェスの話などをしていたブログも今ではすっかり路上観察一色。