今回は銭湯のビジュアル、ペンキ絵の富士山を巡ってみることにしましょう。
今回は銭湯のビジュアル、ペンキ絵の富士山を巡ってみることにしましょう。
お風呂屋さんに訪問した際、浴室奥の壁ペンキ絵やエントランス正面、浴槽上、男女浴室の境壁などにあるタイル絵などのビジュアルを観賞するという楽しみ方があります。
このビジュアルの中でも特に奥壁のペンキ絵は関東地方周辺に多く(他の地域では絵がある場合はタイル絵がほとんど)その題材は富士山が多く描かれています。
他にも見附島や上州奥利根、四国の大歩危など色々な風景が描かれますがやはり富士山が大半を占めているようです。
構図としては手前側に水のある風景がほとんどで、富士山の場合も望む位置は西伊豆、本栖湖などの富士五湖、富士川など水のある風景になっています。
これは下の浴槽との調和を考えての構図となっているそうです。

上の写真は熱海湯。(東京都新宿区神楽坂3-6)
男湯のペンキ絵は富士川から望んだ富士山。
その下にはやはり水に因んだ泳ぐ鯉のタイル絵、男女境壁にも山と湖のタイル絵がある銭湯ビジュアルのフルコースです。

こちらは横浜の関門湯(神奈川県横浜市中区本牧間門32-8)
こちらは横浜の関門湯。(神奈川県横浜市中区本牧間門32-8)
板に直接描かれた富士山は西伊豆からの風景。
この西伊豆、駿河湾の越しの富士山は多くの銭湯で採用されている構図で色々な所で見ることが出来ます。
ペンキ絵下には洋風の建物に湖の風景のタイル絵となっていて、浴槽縁の立ち上がりのタイルにも波の模様が採用されています。


千葉の米の湯
こちらは千葉の米の湯。(千葉県浦安市堀江2-5-15)
ここの富士山は富士五湖のうちの本栖湖から望んだ富士山が描かれています。
ちょうど西伊豆側からとは反対側から見た富士山になっています。
この富士五湖側からの富士も多くの銭湯で見られる構図となっています。


こちらは田浦湯。(神奈川県小田原市扇町1-15-9)
こちらは田浦湯。(神奈川県小田原市扇町1-15-9)
小田原の町にある小さな銭湯なのですが、ここの男湯の富士山は今までの銭湯の富士山と違い、神奈川の絵師によって描かれた富士山のペンキ絵です。
今はこの絵を描いた絵師の所属する神奈川一円のお風呂屋さんにペンキ絵を描いていた広告社も無くなってしまいましたので残っている物も少なく、また減っていく一方なんですね。


次は少し変わった事情で描かれた富士山を紹介しましょう。


これは曳舟湯(東京都墨田区京島1-7-10)の男湯に描かれた富士山のペンキ絵
これは曳舟湯(東京都墨田区京島1-7-10)の男湯に描かれた富士山のペンキ絵。
今までご紹介したペンキ絵の富士山とどこか違うような気がしませんか?
これは銭湯絵師の作ではなく「ワイルドスピード×3 TOKYO DRIFT」という映画作品の撮影のために美術の方が描いた富士山のペンキ絵なのでした。
とても良く描けていますが水と富士山との距離感のデフォルメが弱くて浴槽との一体感が薄い写真的な富士山となっています。
やはり銭湯を知り尽くした絵師の作には敵わないようでした。
ところでこの曳舟湯は残念なことに再開発でいずれは取り壊しになってしまう運命にあるということです。
外観も立派な寺社造り風の東京銭湯なのに残念ですね。

最後は富士山ではありませんが少し変わった構図のペンキ絵です。


これは神奈川県三浦市・三崎港近くにあった高野湯(残念ながら廃業してしまいました)のペンキ絵です。
やはり神奈川の絵師による絵は黒四ダム。
やはり手前に水が来ていますが、ダムを構図に取り入れることは非常に珍しく、他に類を見ない例となっています。

今回は色々な風呂屋の富士山をご紹介いたしました。
初めにも触れました銭湯のビジュアル、他にもペンキ絵などがありますが、こちらはいずれまた取り上げたいと思います。

みちくさのついでにでも、たまにはお風呂屋さんの絵ハガキのような富士山を観賞しつつゆったりと湯につかるのもよいとおもいますよ。
また、今年はまだあるかわかりませんが、東京都の銭湯組合では昨年、一昨年と「風呂屋の富士山詣で」というスタンプラリーが催されておりました。
いつもと違う銭湯でいつもと違う富士山を眺めてみるのもまた一興です。

※掲載した銭湯の浴室写真は他に入浴客が無い時に許可を得て撮影しています。
 くれぐれも勝手に写真撮影したりしないようにしましょう。






  • まぁやぁ

  • 銭湯と路地裏散歩な日々

  • 銭湯wiki

  • 1960年、東京生まれ埼玉育ち。現在は神奈川県藤沢市に在住。小さい頃は風呂屋のペンキ絵が描きかえられるのを心待ちにしていた子供でした。

  • 現在は路地裏散歩と居酒屋徘徊を趣味としており、産業遺産ならぬ生活遺産に興味を抱き銭湯や古建物などを見て巡っております。

  • 座右の銘は遠い温泉より近くの銭湯、かな。