
東京の中、町のあちこちにお気に入りの場所を増やしていきたい。そう思いながら暮らしています。

どのくらい東京を好きになって、どのくらい東京を楽しむことができるか、それが日々を楽しく暮らしていくためのカギなのではないかな?と、思う。
もちろん、東京でなくてもいいんです。自分が暮らしていくことに決めた町、好きじゃなかったら、もったいない。
私なら、東京。

ちょっと空いた時間に、お休みの日に、あてもなく歩くと、見えてくるのは人々の暮らし、生きる姿。
喫茶店ならば、コーヒーとコーヒーを愛する人々の姿も見えてくる。
何度も前を通っている気になる店、入る勇気がなかなか出ないちょっと入りづらい店、入ってみたら、またひとつお気に入りの場所が増やせるかもしれない。

こちらのページでは、昭和の暮らしが残り、ほっとできて懐かしい気持ちになる喫茶店をご紹介していきたいと思います。
私もこの機会にお気に入りの店の頼んだことのないメニューに挑戦したり、知らなかった店にも入ってみたいと思います。
知らなかった店を知りながら、なぜ喫茶店が魅力的なのか、なぜ喫茶店が好きなのか、純喫茶へのみちくさは、私にとってその理由を確認し続ける小さな冒険旅行でもあります。
”あの町に行ったら、あそこに立ち寄ってコーヒーを飲んでいこう”そう思える、お気に入りの場所がもっともっとたくさんあったら嬉しい。。

さて、初回は神田にある珈琲専門店エースに寄り道。
昭和46年創業。
創業当時から世界の珈琲40種と、紅茶15種類という、種類の豊富さが驚異的な店。
私が最初に取材をさせてもらったときは創業37年だったが、「もう来年で40年ですよ」と店主の清水さんはいう。
コーヒー以外の看板メニューに、海苔をはさんだトーストに醤油ととバターで味付けした「のりトースト」(120円!)があり、とっても美味しいので、はじめそちらを紹介しようかと思った。だが、すでに拙著『東京ノスタルジック喫茶店』でご紹介させていただいているので、別のメニューを撮らせてもらうことにした。
ついつい行くとブレンドコーヒーにのりトーストの組み合わせで注文してしまうのだが、なにしろ種類が多くて見たことも聞いたこともないようなコーヒーや紅茶があるので、試してみたいものもいろいろ。
「コーヒーゼリーなんてどう?」と清水さんがいうのでコーヒーゼリー(510円)を、それからユーゴスラビアの紅茶だというドブロブニク風ナッツミルクティー(550円)を選んだ。
コーヒーゼリーはアイスコーヒーにも使っているイタリアンローストという豆を使用した、苦みのきりりと効いたもの。
ナッツミルクティーは甘くてまろやかでやさしい味がした。
せわしない町の中よりも、ゆっくりと時が流れているような気がする。
店の中は決して静かではないのに、心がどんどん穏やかになる。


神田の店の入れ替わりは非常に激しいという。
飲食店に関して言えば、安くて美味しい店じゃないとなかなか生き残れない、と清水さん。そんな変化の激しい町で、もうすぐ40年、愛され続けている。
「今日は暇なほう」なんて言いながら、この日もお客さんは入れ替わり立ち替わりやってきて、清水さん兄弟との会話や束の間の休息時間、おのおのの時間を楽しむ人々の姿があった。
私もまた、ほっとしに行こう。
●珈琲専門店 エース
千代田区内神田3-10-6
03-3256-3941
神田駅西口より徒歩3分
7:00~19:00(土曜のみ~14:00)
日・祝定休日


- 塩沢 槙(しおざわ まき)
- http://www.makishiozawaphotography.com
- 塩沢槙 写真執筆事務所ブログ
- 撮影業・執筆業。1975年生まれ、東京都出身。1999年~2000年ロンドンへ留学。帰国後、大学在学中より仕事を始める。近年は東京の街や文化、日々の生活・暮らしに特に興味を持ち、書籍の制作を中心に活動中。2007年『東京プチ・ヒーリング』、2009年『東京ノスタルジック喫茶店』、2010年
『東京・横浜 リトル・カフェ物語』を河出書房新社より上梓。2011年7月、撮影・執
筆共に手がけた著書4冊目となる『東京ノスタルジック喫茶店2--郷愁の喫茶を訪ね
て』が河出書房新社より発売になり、好評発売中。