看板建築鑑賞に適した季節はいつかと問われれば、即座に「冬!」と回答できます。看板建築を眺める最大の障害、それは街路樹なのです。
看板建築鑑賞に適した季節はいつかと問われれば、即座に「冬!」と回答できます。看板建築を眺める最大の障害、それは街路樹なのです。

寒い!でも今は看板建築鑑賞のハイシーズン?

寒くなりました。一般的にはあまり散歩に向いていないシーズンです。たぶん、みちくさ散歩に向いているシーズンは、春か秋だと思います。陽気が穏やかで、街歩きに最適です。

それに比べ、冬真っ盛りは指先も頬も足も腰も冷えますので、長時間の散策向きではありません。すぐに日が落ちてしまうのも時間制限になってしまいます。
もしかすると、「暖かくなるまでみちくさ散歩は控えて、こたつで『みちくさ学会』のコラムを読んで過ごそう」なんて考えている人がいるかもしれません。

ところが、看板建築鑑賞のハイシーズンは「冬」なのです。冬に出かけないのはもったいない、といってもいいくらいです。なぜでしょうか。

冬こそ看板建築鑑賞の好機。
最近の街路樹はしっかり成長しているので看板建築が隠れてしまう。美しいファサードがじっくり鑑賞できないことがある。


街路樹が看板建築鑑賞の邪魔をする?

看板建築鑑賞の敵はいくつかあります。路上駐車している車はその最たるものです。建物の全景を納めようとカメラを構えても車が邪魔するのです。ドライバーはいないため、なかなか車はどいてくれず困ってしまいます。

道路幅も敵のひとつです。路地裏にひっそりと建つ看板建築は歩道が狭すぎるため斜めからしか撮影できなかったりするのです。広角レンズで無理やり、ということもありますが、狭い路地の奥に隠れた看板建築もかわいいので、これはまあ仕方ないところでしょうか。

しかし、もっと困ってしまうものがあります。それは街路樹です。

表通りに残った看板建築によく見られるのですが、歩道に街路樹が植わっていることがよくあります。街路樹は殺伐としがちな都会のアクセントなのですが、たっぷり葉を茂らせている夏は、建物の姿が隠れて写真にうまく写ってこないのです。今回もいくつか紹介していますが、葉が落ちた冬だからこそ、建物の姿がしっかり写っていることが分かります。


冬こそ看板建築鑑賞の好機。夏は葉に隠れて見えにくかった建物の姿が、葉の落ちた冬の街路樹の枝の向こうによく見えるようになる。


看板建築を撮影するなら、冬! さあ、でかけよう

看板建築のおもしろさは主に、2階部分のファサード(前面部分)にあります。アールデコを気取った装飾があったり、屋号のマークや店名が描かれていたり、江戸小紋が洒落ている戸袋が鑑賞できるのは、いずれも2階部分なのです。

看板建築好きは、上を見上げて歩きます。前回のコラムも「看板建築の耳」を見上げてみようという話でしたが、これも上を見上げて歩かなければなりません。そのとき、「おっ」と思った物件を撮影しようとしても、街路樹が邪魔して写真に撮りづらいことがあります。

看板建築好きになるには、街路樹の葉が落ちた冬こそが絶好のチャンス!(いや、シーズン問わずにファンになってほしいものですが)。

冬こそ看板建築を見に、街へ出てみませんか?


同じ建物で、夏と冬を比較してみるとこんな感じ。夏は街路樹の葉で建物の半分くらいしか見えなかったが、冬は正面からじっくり鑑賞して撮影もできる。


(撮影地:渋谷区道玄坂、世田谷区代沢、千代田区神田司町・神田神保町、台東区根岸あたり)


追伸
 実は、看板建築鑑賞の敵がもうひとつあります。
 商店街にはよくある「アレ」なのですが、
 その話はまた機会があれば改めて。





  • 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)

  • 趣味ホームページ 8th Feb.

  • オフィシャルHP financialwisdom

  • 1972年生まれ。本業はファイナンシャルプランナー。資産運用とか年金のことを分かりやすく書いたりしゃべるのが仕事。副業はオタク。ゲーム・マンガ・街歩きを同時並行的に好む。所属学会は日本年金学会と東京スリバチ学会。Twitterアカウントは@yam_syun