ワイルドかつ精緻。愛知を代表する鍾馗さん(知多市新知)
府県別の鍾馗さん紹介も6回目で、今回は筆者の住む愛知県です。
もともと世間に鍾馗さんの情報は少ないですが、京都や奈良についていえばさすがに観光地。
「鍾馗 京都」でググると結構、いろんな人が書かれた鍾馗の情報がヒットします。
それに引き換え「鍾馗 愛知」の検索結果には、筆者の記事がずらっと並んでます。
孤独感を感じないでもないですが、独り、道を切り開いている快感はすこしあるかな(^^;

知名度は低いものの、愛知県は数で言えば京都につぐ(と思われる)鍾馗さんの大分布地です。

瓦産地愛知


常滑焼を焼く小さな窯元が、細かな起伏の多い町に点在している(常滑市)


愛知県は瀬戸、常滑といった古くからの焼き物の産地を擁するだけでなく、瓦の生産でも全国一。鍾馗さんといえば銀鼠色のいぶし瓦が思い浮かびますが、愛知県では釉薬のかかったカラー鍾馗、朱泥で作られた赤鍾馗といった、お国ぶりを生かした鍾馗さんが見られます。


型はすべて同じです。左から、いぶし瓦、灰釉、朱泥、青釉、緑釉 (知多半島から西三河で採集)


現在、瓦生産の中心は西三河南部の高浜市で、近代化された大規模な瓦工場に加え、伝統的な鬼瓦を製作する鬼師さんたちが工房を構えていて、その中の何人かは今でも鍾馗さんを製作されています。


分布


得意の分布図です。
ご覧の通り、東海道の南側、知多半島と西三河南部付近に偏在しています。
これらの地区が瓦の生産地であることに加え、海上交通も含め古くから関西地方との通商、交流が盛んだったことが、瓦鍾馗文化が普及した理由のひとつと思っていますが、推測の域をでません。
また、尾張地方北部から岐阜県にかけて、「屋根神さま」といって、隣近所が共同で屋根にお社を祀って家内安全を託す風習があります。その習慣とバッティングするため、それらの地域には魔除けの瓦鍾馗が普及しなかったのでは?とも推理しますが、これも今のところ筆者の「珍説」レベルでしょう。


特徴

愛知県では「お寺鍾馗」は少なく、「お寺の周りに鍾馗さん」のセオリーが通用しません。古い民家が残っていそうな町を探し、勘を頼りにともかく歩いてみることが必要です。

その一方で軒先に置かれることは少なく、二階の大棟の上に乗っていることが多いので、
田園地帯の集落では、自動車を走らせていても鍾馗さんを遠くから見つけることができます。

見つかる数は多いのですが、個性的な手作りの鍾馗さんは少なく、大部分が型物の量産品です。
奈良や三重に較べ瓦産業の集約が早くから進んだため、零細の業者は淘汰されてしまったのでしょう。

そんな中で、これはという代表選手を何人かご紹介します。


三河湾に浮かぶ小島にもこんな立派な鍾馗さんがあった(一色町佐久島)



この鍾馗さんの所在地はセントレア(=中部国際空港)もちろん新しいもの。



この鍾馗さんによく似た兄弟が知多半島には何体か存在している(武豊町東大高)



両手で剣を地面に突き立てていたが、剣が欠損して忍術をかけているみたい(知多市日長)



おすすめ探訪地-名古屋市緑区大高町

JR東海道線大高駅の南西側、大高城址の小高い山を取り囲むように広がる大高町は、知名度は低いが、
昔ながらの地割りと細い路地、農家に商家、造り酒屋などが入り混じった普段着の町並み。
町並み探訪の穴場としても十分楽しめますが、鍾馗さんも多いこと多いこと。
これでもかというくらい鍾馗さんが見つかります。この分布密度はおそらく全国一。
慣れない方でも、1時間も散歩するうちに10や20の鍾馗さんを見つけることができるでしょう。





大高町内で見つけた素朴な鍾馗さん



今回紹介した鍾馗さんたち


知多市新知
<0019>
一色町佐久島
<1008>
常滑市セントレア
<1011>
武豊町東大高
<0003>
知多市日長
<0881>
名古屋市緑区大高町
<0388>


※写真をクリックすると筆者のブログ「鍾馗を尋ねて三千里」の解説ぺージが開きます。
※<>内の数字は筆者HP「鍾馗博物館」内・収蔵室の通し番号です。






  • Kite

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  • 鍾馗博物館

  • 愛知県在住の会社員、1961年生まれ。
    週末のたびに関西方面へ遠征し、民家にひそむ鍾馗さんに望遠レンズを向けてます。
    不審尋問には笑顔とポケット版鍾馗ファイルで対抗するも、追い払われることもしば
    しば。