ガス灯、燃え!・・・いや、萌えー!

今回からは数回に分けて、街灯の元祖・ガス灯について明るみにしていきます。これを読んだ後には、ガス灯萌え、いや、すっかりガス灯鑑賞のツボを押さえることができるはずです。・・・あまり生活には役に立たない情報ですけど。写真は横浜・馬車道の入り口を飾るガス灯です。

街灯のはじめて物語・ガス灯


まずはガス灯の歴史について、すごく簡単ですが、ひも解いてみましょう。

イギリスでガス灯が初めて点ったのは1792年のこと。そのおおよそ80年後、明治4年(1871年)に大阪の造幣局で日本で初めての西洋的なガス灯が点灯されました。造幣局の宿舎内部に621基、付近の街路に65基のガス灯が設置されたのです。ただし、これはあくまで造幣局のための明かりにすぎず、大阪で一般向けのガス事業がスタートするのは、ずっと後のことです。
当時のガス灯は、今でも旧正門前、造幣博物館内に展示されており、特に旧正門前の2基のガス灯については、現在も点灯されています・・・桜が咲いた頃にご紹介できるかと思います。

翌年の明治5年(1872年)には、今度は横浜で、実業家・高島嘉右衛門がフランス人ガス灯技師・アンリ・プレグランを招き、本格的なガス事業がスタートし、現在の馬車道を中心に街路にガス灯の明かりが灯されました。

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↑本町小学校前のガス灯


中区花咲町、現在の本町小学校の場所にガス工場を建設が建設されました。現在の本町小学校の前には、「日本ガス事業発祥の地」の碑と共に、ガス灯1基が設置されています。
ここから県庁、大江橋、馬車道本町通りにガス管を引き、ガス灯10数基が設置され、明治5年10月31日(旧暦では9月29日)に点灯されました。ガスの記念日はその日を記念して10月31日に制定されています。また、馬車道では、毎年ガス灯のお祭りイベントが開催されています。

なお、最初に電灯(アーク灯)が点灯したのは明治11年(1878年)の東京・虎ノ門ですので、電気が先か、ガスが先かでいえば、ガス灯のほうが少しだけ先になります。日本における街灯は、ガスで始まったのです。

ガス灯についての基礎知識1・マントル


まず、現代の一般的なガス灯をご覧ください。山下公園通りにあるガス灯です。
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↑山下公園通りのガス灯


炎が見えないじゃないかって?

灯具の上にくっついたこの丸っこい小さい3つの電球のようなもの・・・これが現在の一般的なガス灯です。火口は「マントル」という丸い発光材で包まれているため、直接、炎は見えません。一見、ちょっと変わった白熱電球のように見えます。初めて自分が見た時も「これがガス灯なの?」という印象でした。
マントルというのは、繊維に発光剤をしみこませたもので、明治19年(1896年)オーストリアのウエスルバッハによって発明されました。これにより、60ルクス程度の明るさしかなかった裸火のガス灯が、5倍ほど明るく輝くことが可能となり、ガス灯が街角の明かりとして普及するきっかけとなります。
このガス灯は3マントルタイプのガス灯ですので、さらに三倍明るくなるわけです。中には6マントルの明るいガス灯も存在します。

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↑裸火のガス灯(ガスミュージアム所蔵)


マントルが普及する前の裸火のガス灯は、小平のガスミュージアムで「横浜のガス燈」として展示・点灯されています。設置当時の状態が再現されたものです。ガスバーナーそのものですね。
ガスミュージアムについては、こちらを → http://www.gasmuseum.jp/
今回、記事を書くにあたって、いろいろ勉強させていただきました。ありがとうございます。入場料無料、駐車料金無料で10時~17時まで(入館は16時まで)です。

初期のガス灯は写真のような裸火でしたが、明治27年頃、上向きマントルのガス灯が出現し、現在あるガス灯は、ほぼすべてがマントルを使ったガス灯です。といってもほとんど復元されたり、新造されたものばかりですが。

ガス灯についての基礎知識2・上か下か?


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↑銀座のガス灯


銀座三丁目のガス灯通りのガス灯は銀座のアップルの裏側にひっそりと点灯しています。こちらは「上向きマントル」タイプです。先ほどの山下公園のガス灯の写真と比較してみてください。支柱から「上向き」にガスが放出され、マントルを通じて明かりが灯されている構造的な違いがおわかりいただけますでしょうか?
支柱からガス管を通すガス灯は、灯具の下から「上向き」に火口を設置するほうが構造的には単純ですが、光が支柱と土台に遮られるため、暗いです。灯台もと暗し、ですから。

これに改良が加えられ、灯具の上側までガス管を通し、下向きに火口を設置した複雑な「下向きマントル」ガス灯が普及するのは、明治40年頃になります。構造的にも、下向きにしたほうが、より明るくなります。

ガス灯についての基礎知識3・数


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↑山下公園入口の2灯式ガス灯


マントルの数や上向き・下向きといった構造的なものとは別に、一本の支柱につき灯具の数を二個、三個と増やしていけば、その分明るくなるわけです。写真のガス灯は山下公園の入り口にある2灯式のガス灯です。
1灯〜5灯タイプのものが一般的ですが、世の中には特注品の7灯式、9灯式のガス灯まであるそうなので、また機会を改めてご紹介させていただきたいと思います。

今回長くなりましたが、これでガス灯鑑賞の準備が整ったところで、次回は関東近郊で、ガス灯萌え、いや、ガス灯巡りをしてみましょう。お楽しみに!




  • 夜景専科(本名:三原 崇)

  • 夜景専科blog

  • 1974年横浜生まれ、千葉育ち、東京暮らし。某情報サービス企業でWeb系業務を担当。
    仕事があまりにも多忙だったため、夜しか遊べず、夜を撮るきっかけに。カメラは30才を超えてから。一眼レフを持ってあちこち出歩くのが趣味です。一応、夜以外も撮りますけども。