これまで、奈良県から始めて京都、大阪、滋賀、三重、愛知と鍾馗さんが多く見られる
関西の府県を取り上げて紹介してきました。それ以外の地域には鍾馗さんはあるのか?
筆者がこれまで記録してきた鍾馗さんの97%を上記の6府県が占め、それ以外は3%、300体強に過ぎません。すべてを歩き尽したわけではないので、日本のどこかに筆者のまだ見ぬ「鍾馗の里」があるのかも知れませんが、瓦鍾馗さんを屋根に祀る風習は、関西以外では一般には広まらなかったと言っていいと思います。

したがってこれ以外の地域では、何がしかの情報をもとに、ねらって見に行かないことには
出会いはかなり難しく、鍾馗探訪は「みちくさ」とは対極のマニアックな旅となります。

今回からは少し趣きを変えて、分布域外の鍾馗さんの状況とともに
私的な記憶を交えて「辺境」の鍾馗さんをご紹介していきます。


時間と元手を費やして、たった一体の鍾馗さんに会いに行く。
「愚行」を我に返って自省することもあるけれど、やっぱり止められないな。


発見は偶然から

探訪地は徳島県井川町辻(現在は三好市)。

初めて訪れたのは2005年のゴールデンウィークのこと。
鍾馗に目覚める直前、当時は古い町並みを巡るのを趣味にしていて、このときも徳島市からレンタカーで
脇町、貞光をぶらぶらした後、池田へ向かう途中でたまたま発見したのがここ

予定にはなかったけれど国道から緩い角度で斜めに分かれて行く、いかにも旧道といった佇まいの
町並みを発見し寄り道しました。これは「みちくさ」っぽいな。


小規模ながらも風格ある古民家が並ぶ町並みの中、こんな飾り瓦満載の旧家を発見。
感心してカメラを向けたものの、特に気にも留めないまま忘れていました。

その後、鍾馗さんにのめりこむようになってから昔の写真を見返していると、
この写真の右上隅に偶然、鍾馗さんらしき姿が写りこんでいるではないですか。
うん、これは鍾馗に違いない。恵比寿大黒のたぐいではない。


2007年3月 再訪

こうなるとどうしても確かめてみないことには納まらないので、
○○の沙汰とは思いつつも、再度この鍾馗さんに会いに行く(だけの)旅を企画しました。
青春18きっぷを活用して、愛知県から徳島まで日帰りという強行軍です。

米原 635 → 929 相生 930 → 1035 岡山 1044 → 1107 児島 1114(特急利用)→ 1145 琴平 1151 → 1232 佃 1233 → 1236 辻 1341 → 1350 阿波池田1410(特急利用) → 1527 岡山 1533(新幹線) → 1559 姫路 1605 → 1610 英賀保 1622 → 1852 米原

自宅から米原は高速利用して、大垣~米原間の混雑を回避するとともに時間節約するのがお約束。
詳しい説明は省きますが、この行程には<せこい>のも含め、いろんな工夫が詰まっているんですよ。

車の運転2時間、列車に揺られること10時間以上で、目的地滞在は1時間ちょっと(笑)


再会してみてやっぱり鍾馗さんであることを確認。ちっとも恐ろしげでない、憂い顔の鍾馗さんでした。
保存状態が良くないのが気懸かりですが、青い空に渋い燻し色がよく映えています。


四国の鍾馗さん

筆者が四国で発見した鍾馗さんは後にも先にもこの一体だけです。

特に香川、徳島あたりでは本瓦葺の屋根に凝った飾り瓦を乗せた古い家がたくさん見られるので、
いつ行っても心躍るのですが、なかなか鍾馗さんには出会えません。


うだつの町並み 脇町(徳島県美馬市) 鬼瓦はいたるところに。でも鍾馗さんは見当たらず


ところが最近、我が盟友のおとんさんが地元の方の情報提供もいただきながら、
続々と四国で鍾馗さんを採集していて、愛媛県西部を中心に既に10体以上が見つかっています。


クリアな写真と軽妙な筆致で鍾馗さんが紹介されていますので、ぜひご覧ください。

 鍾馗を探そう! http://blog.goo.ne.jp/shoki_shoki

四国では今後も思わぬところから新発見が期待できそうです。

今回紹介した鍾馗さんたち


三好市井川町辻
<0740>


※写真をクリックすると筆者のブログ「鍾馗を尋ねて三千里」の解説ぺージが開きます。
※<>内の数字は筆者HP「鍾馗博物館」内・収蔵室の通し番号です。






  • Kite

  • 鍾馗を尋ねて三千里

  • 鍾馗博物館

  • 愛知県在住の会社員、1961年生まれ。
    週末のたびに関西方面へ遠征し、民家にひそむ鍾馗さんに望遠レンズを向けてます。
    不審尋問には笑顔とポケット版鍾馗ファイルで対抗するも、追い払われることもしば
    しば。