看板建築はどんどん取り壊されていきます。しかし、その痕跡はしばらくの間、街に残っています。ただの空き地に目を向けてみます。
看板建築はどんどん取り壊されていきます。しかし、その痕跡はしばらくの間、街に残っています。ただの空き地に目を向けてみます。

狭い空き地を見つけたら看板建築を思え?

看板建築は取り壊される運命にあります。どこをどう考えても、土地の有効利用とはほど遠いからです。同じ土地の固定資産税を払うなら、2階建てより4階建てにしたほうが、テナントも増え、賃料も増え、お得ですものね。

存続している看板建築の何割かは、お店を廃業した自営業夫婦のご自宅になっています(もちろん細々と営業を続けていることもあります)。こうしたご夫婦は、「自分らが死ぬまではこのままで」と思っておられるようで、結果として看板建築が長持ちしてます。

しかしいつかはお別れの時期がきます。子が相続税や遺産分配に際して土地を手放せば、看板建築は壊されます。ご夫婦は健在であっても、子どもと同居することにして土地を手放すこともあるようです。

そんな風になくなっていった看板建築は狭い空き地を残します。今回は「元看板建築であった土地がどうなるか」書いてみたいと思います。

「看板建築跡地」利用の3つのパターン

私がみちくさ散歩をしていて把握した「看板建築跡地」の使われ方を分類してみました。


左右は同一の場所を撮っている。上は更地になり駐車場として使われているパターン。下はまさに建物が消えたばかりで土も露わになっている。

パターン1)取り壊し間もないパターン
まだ更地になったばかりで、土もむき出しになっている場合、「取り壊しほやほや」ということです。小さなスペースであることが「看板建築跡地」であることを忍ばせます。
トップ画像がその例で、左のような看板建築があったものが、ある日突然更地になっています。左右も看板建築なのですが、真ん中だけが消えているケースです。

こういう土地をみかけたら、googleストリートビューを見てみるといいでしょう。以前どんな建物があったか分かるからです。かなり素敵な看板建築物件が画面に表示されて「ああ、もう少し早くに来ておけば良かった!」と思うこともしばしばです。しかし、それが看板建築鑑賞の一期一会的愉しみなのです。

パターン2)フェンスなどで閉じられているパターン
更地にしたあと、まだ用途が定まっていない場所に、とりあえずフェンスが張り巡らされた、という感じの土地も「看板建築跡地」の疑いが濃厚です。

こういうパターンの場合、隣の建物も立ち退きを迫っており、ブロックごとに大規模な再開発をしようとすることもあります。近所を少し見回ってみると似たような小さなスペースがいくつもあれば、ほぼ間違いありません。道路拡張の予定が控えている場所もフェンスでしっかり囲んであることが多いようです。

残っている建物は、消失は確実です。いい物件があれば、写真に納めておくといいでしょう。


隣地が再開発の始まった看板建築。このお店がいつまで営業を続けられるかは分からない。

パターン3)駐車場になっているパターン
看板建築の標準的な一軒幅は4間(約7.2メートル)くらいで、これは昔の商店のサイズです。車でいえば2台並んで入れる駐車場スペースという感じです。

車2台か3台程度の小さなコインパーキングを見つけたら、これも「元看板建築」の疑いが濃厚です。ただし、取り壊しからは「更地化→フェンス化→駐車場化」という流れをたどっていると思われ、少し時間がたっている感じです。

コインパーキングは再開発前の空き地を有効活用するポピュラーな選択肢です。もし、周囲にも2~3台のコインパーキングがいくつかあったり、一軒お隣に10台止められる凸凹した敷地のコインパーキングがある場合も、再開発直前という雰囲気です。

まだ立ち退かずに看板建築が残っていないか周囲を見回し、前後左右からぜひ鑑賞しておきましょう。


隣地が駐車場利用のパターン。看板建築を取り壊したスペースは狭いので数台しか駐車できない。上の2点は同一の建物を角度を変えて撮影している。裏に回ると駐車場が現れる。


ダンメン的にもトマソン的にも跡を残す看板建築

看板建築が消えた跡地の利用のされ方についてここまで述べてきましたが、隣地に看板建築が残っていた場合、みちくさ学会で共に活動する仲間の研究領域(?)にも接点が生じることがあります。

看板建築の横顔に、「かつてそこにあった看板建築のライン」が残されていたりして、「ダンメン」や「トマソン」に通じるからです。
駐車場側から看板建築を鑑賞することは、実は「ダンメン」鑑賞であったり「トマソン」鑑賞であったりします。今日は数点の紹介にとどめておきますが、この話題はまたじっくり書いてみたいと思います。

(撮影場所)
千代田区神田多町・神田小川町・神田須田町、新宿区西早稲田・東五軒町、台東区下谷あたり






  • 山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)

  • 趣味ホームページ 8th Feb.

  • オフィシャルHP financialwisdom

  • 1972年生まれ。本業はファイナンシャルプランナー。資産運用とか年金のことを分かりやすく書いたりしゃべるのが仕事。副業はオタク。ゲーム・マンガ・街歩きを同時並行的に好む。所属学会は日本年金学会と東京スリバチ学会。Twitterアカウントは@yam_syun