街歩きにおいて必須のアイテム・地図。これまでにもスマートフォンで使える地図アプリをご紹介してきましたが、今回は昨年取り上げた「東京時層地図」の開発を担当された方々に、その魅力とおススメの使い方を聞いてきました!
プログラム担当 元永二朗さんに聞く
-「東京時層地図」の開発にあたって、苦労された点や自慢の機能はなんですか?
「(データ品質と幾何補正などその実現の苦労に加えて)自慢は表示・操作性の快適さで、苦労した点も前記を実現するための作業です。素早い地図の表示とスムースな操作性の実現、そのために大量の地図データをアプリに内蔵する部分など。」
-たしかに、参照している現在の地図と(Google Maps)、内蔵している過去の地図の切り替えがスムースなだけでなく、ズレが全くないですよね!まさに、今と昔を比較したい時に無くてはならない機能ですからね。おススメの使い方はどのようなものでしょうか?
「お勧めの使い方は、散歩しながらの使用です。常にiPhoneを見ながら歩くより、時々気になる地形や不思議な街路を見つけた時に立ち止まってサッと起動してGPSを使って確認するというのが、散歩の楽しみを邪魔せず良いようです。また、ブラタモリを見ながら使うのも楽しいです。」
-わかります!逆に時代劇なんかを見ながら、今この場所には何があるんだろうと確認してみるのもおもしろいですよね。
「電車やバスに乗っている時に車窓と見比べながらもお勧めです。移動速度が速いので、地形の中を進んでゆくダイナミックさが際立ちます。」
-そういう楽しみ方もあるんですね~!早速やってみます(笑)。今後のバージョンアップについて教えていただける範囲で教えてください。
「今後の展開については、実現時期はまだ未定ですが、ツイッターとの連携や移動軌跡の表示などいくつかの機能追加を検討中です。
また近日中にRetinaディスプレイに対応するバージョンアップを行います。」
-過去の地図を見ているひとたちのTwitterのタイムラインなんて、なんだか不思議な感じがしそうですね。貴重なお話ありがとうございました。
地図編集担当 田中圭さんに聞く
-田中さんが開発で苦労なさったのはどのような部分なのでしょうか。
「地図は時代によって、位置を示す緯度経度のシステムが変化しています。
日本の座標系は、1918年の東京天文台の経度改訂にともなう地形図の経度改訂や2001年の日本測地系から世界測地系へ移行された経緯があります。
また、アプリに使用した文明開化期の地図(迅速図)には経緯度が表記されていません。そのため、現在の座標系に位置を合わせる作業(専門的には幾何補正と言います)が一番苦労しました。
特に、迅速図は現在と変化の少ない神社仏閣等の地物や道路縁などを目印に位置合わせの作業を行いました(下図)。この作業を通して,明治からの名残が現在の東京に多く残っていることに驚きました。」
-なんと、時代によって緯度経度が違うんですね、まずそこの照合からですか……目印になる建物が少ない新しいエリアだと大変そうですね…。
「 今後の展開としては、東京時層地図の「文明開化期」で表示される「五千分一東京図測量原図」が書籍として、3月末に復刻されました。
以前(1984年)、当センターから提供した測量原図は、原本を写真撮影して印刷した地図だったので、微小な地物等の表現が不鮮明でした.今回の復刻版は、原本をデジタル化し、当時の姿に近いように色調補正を施した高精細な地図となります。」
-5000分の1というと、とても詳細な地図が楽しめそうですね。
「本書では図葉ごとに現在の地図をオーバーレイできるようになっています(いわゆるアナログ版時層地図)。さらに,東京時層地図には搭載していない内務省地理局が刊行した「東京実測全図」も収録されています.この地図には、地番が表記されているので、各種の史資料の位置確認に利用できるほか、文学作品を楽しむためにも役に立つと思います。」
-なるほど。登場人物や歴史上の人物の地番が小説に出てくることもありますしね。アプリの方はいかがでしょうか。
「ユーザからのご要望が多かった「横濱時層地図」アプリを提供いたします。横濱版は、今年5月を目途に提供ができるよう現在鋭意制作中です。進行状況についてはホームページでご案内していきます.また、他の地域については、皆さまのご要望をもとに検討させていただきます。」
-横浜ですか!今立っている港は昔砂浜だったのか!みたいな感動が味わえそうですね。山手のお屋敷町を改めてスマートフォン片手に歩いてみるのも楽しそうですね!ありがとうございました。
道端に眠っている意外な歴史を掘り起こしてくれる「東京時層地図」。日本地図センターさんの取り組みは、われらみちくさファンをこれからも楽しませてくれそうです。また、第15回「地図地理検定」の日程も発表されました。興味のある方は、是非受検してみては?
■関連リンク
・「東京時層地図」(※App Storeへ遷移します)
・東京時層地図|地図センター ~地図を見る・知る・買う~ - 公式サイト
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