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屋外のものを鑑賞する趣味は、大きく分けて2種類ある。
ひとつはダムや工場など、特定の場所に行けば目的のものが観られることがわかっているもの。
もうひとつは、観たいものは明確なのに、どこに目的のものがあるかはっきりとわからないもの。

このみちくさ学会で取り上げられている題材は殆どが後者だが、その中でも換気口は群を抜いてどこに行けば観られるのかよくわからない。
「どこでそんなの見つけてくるんですか」という質問を受けることがあるが、長らく鑑賞している私でさえ、思いもよらない場所でハイレベルな換気口群を見つけることもあれば、期待に胸膨らませて訪れた土地で空振りに終わることもある。
空振りが何度か続くと、ついブログで「あなたの家の近くで良い換気口物件はありませんか」と呼びかけてしまうが、たいてい反応は殆ど返ってこない。それはそうだ。この趣味、私しかやってないんだから。

とはいえ、全く傾向がないかといえばそうでもない。

そもそも私の期待する換気口は、中層のオフィスビルあるいはマンション、高さ的にいえば8階~12階建てくらいの建物にある。それより低いビルは高さ的に物足りないし、それより高いビルは壁面に換気口がないものが多い(タワーマンションあたりが典型)。

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ならば、そういった中層の建物が密集した場所を探せばよい。

東京でいえば渋谷・六本木・お台場といった誰が見ても繁華街という場所には私の求めるものはなく、一戸建ての住宅ばかりが立ち並ぶ地域にもない。みんなの住みたいまちアンケートで上位に入るようなおしゃれな街にもない。

五反田、大森、新高円寺、中野坂上、駒込、といった(失礼ながら)どちらかというと中途半端に栄えている地域にこそ、換気口はある。

週末、google earthで中層の建物がありそうな地域に目星をつけ、そこに行っては換気口を探す。
この作業は「くぬぎの樹が生えている森」に向かい、カブトムシを探す昆虫採集に似ている。

行ってもそこに目的のものがあるかはわからない。しかし、まだ見ぬカブトムシはきっといる。
麦わら帽子を目深にかぶり、虫カゴを肩に下げる小学生のように、私は今日もカメラを下げて中途半端な都会へ向かう。






  • 前川ヤス

  • がらり~換気口鑑賞団 

  • 1972年生まれ北海道出身。2007年春頃、電車の車窓から見える換気口配列の美に魅せられ、「日本に一人しかいない趣味(タモリさん認定)」換気口鑑賞を始める。一児の父。