今回は実に「純粋」なトマソンをご紹介致します。
あちこちにある無用の長物を愛でるトマソニアンの皆様、お元気ですか?今回は実に「純粋」なトマソンをご紹介致します。
 再開発が進みそうでなかなか進まない、東京都中央区八丁堀に一つ目の物件があるのですが、それは古い建物にくっついている煙突。かつては飲食店であったようで、営業しているときにはここからもくもくと煙が出ていたのでしょう。

 しかし、もうこの煙突から煙が出る事はありません。営業が終了してしまったから?いえいえそうではありません。

 では何故か。この煙突、何にも繋がっていないからです。



 昔は煙突だったのだけれど、今は煙突ではない。少なくとも煙突としての機能は一切果たせない。しかしこれは誰が見ても煙突である。まさしく「純粋煙突」と言えるトマソンです。

 煙突というものは勿論排煙のためにあるのですが、途中の部分を撤去したのに先端の部分だけぽつねんと残されているのがなんとも哀しくもあり、お間抜けでもあり、実物を眺めているとなんとも言えない気分になって実にいい。実に、いい。

 だってですよ?こんな煙突探したってそうなかなかあるもんじゃあないと思いませんか?個人的には我が家にも取り付けたい。しかし賃貸だからそんな事したら追い出されちゃう。ああ残念。実に残念。



 煙突だけど煙突じゃない、でもどうみても煙突というものに続いては、東京都北区某所にある物件なのですが、これもこれで実に素敵です。

 敢えて分類するならば前述した純粋煙突に近いタイプなのですが、建物に塩ビのパイプが縦に這わされています。けれどもこのパイプもなんだか中途半端な位置に、中途半端な感じで取り付けられています。



 もうお分かりになった方もいらっしゃるかと思いますが、これは言うなれば「純粋雨樋」です。もしくは「純粋縦樋」でもいいんですが、とにかくまぁ、樋です。

 何があったのかは全くわかりませんが、樋の真ん中だけが残されているのです。もちろん、雨が降っても役になんか立ちはしないんでございます。なんじゃそら、という突っ込み所満載なところを愛してあげてもらえるととっても嬉しい。



 さて続いては解釈を変えて「純粋」トマソンについて考えてみましょう。いや考えなくてもいいんだけども。

 歩道と車道などの段差を解消する便利グッズが、段差スロープ。これがあれば車で段差を乗り越えるのもらっくらく。もう一回説明します。

「車で段差を乗り越えるとき便利なのが、段差スロープ」

なんですよ。言われなくても十二分にお分かりですね。

 では神奈川県横浜市西区で見つけたこれは何か。段差スロープが段差についてはいるのだけれども、段差の先は植え込みになっているので、当然こんな所を車で通る人はいないわけです。地球上に一人もいないと思います。いたらほんとにごめんなさい。
 
 一体何のためにこんな所に段差スロープがあるのか。偉大な先人の深淵な知恵なのか。いやそれはないだろう、と思うとこれは「純粋段差スロープ」と呼んでも差し支えないんではなかろうか、と思うのです。そんな事思ってるのは僕だけでしょうか。いや違う、きっと違う。と、思いたい。



 今回最後にご紹介するのが、横浜中華街近辺にある物件。
 
 駐車場の中ほどに、なんだか違和感のある物体がぽつねんと立っています。周囲はコンクリートやブロックの塀なのに、真ん中にある物だけがレンガ(のようなもの)造りの柱となっております。
 

 近寄ってみると、どうやらかつては柱か何かだった物のようである事が、わかります。
 
 かつてあったレンガ造りの建物(又は構造物)が取り壊され、今は駐車場となっているのにこの柱だけが残されている、というミスマッチが「純粋柱」と言えると思います。
 
 時がうつろい行く中で、ただこの柱だけがぽつんと残されて過去の記憶を留めている。映画「WALL-E/ウォーリー」や「アイ・アム・レジェンド」のような孤独感がそこには感じられるのです。あ、「アイ・アム・レジェンド」だったら「地球最後の男」の原作小説の方が個人的にはオススメです。
 
 
 
 どこかしら寂寥感の漂う風景が「純粋」タイプトマソンの良さだと思います。今回ご紹介した4つの物件はそれぞれ、どことなくそういった感じが出てる物を選んだのですがいかがだったでしょうか?皆様が見つけた純粋トマソンのご報告もお待ちしております。






  • 川浪 祐

  • From Basshead For

  • 1975年生まれ。中学生の頃父親の書棚にあった「超芸術トマソン (ちくま文庫)」を読んでしまい、トマソン探しの人生を送るようになる。元々は音楽やフェスの話などをしていたブログも今ではすっかり路上観察一色。