電柱や標識柱に残るピンクビラ剥がし跡を散歩します
 今回は、前回に引き続き、電柱や標識柱に残るピンクビラ剥がし跡を散歩します。
 公衆電話ボックスなどに貼られている「ピンクビラ等お断り」の貼り紙。貼り紙の右下に「貼る・配る・差し入れ等の行為...」と書かれています。「貼る」は人が集まりやすい場所に貼ること、「配る」は街頭配布、「差し入れ」はポス トなどに投函することです。これは、江戸時代後期から盛んに行われ始めた刷り物広告が、「貼る広告」の“絵ビラ”と「配る広告」の“引札”に大別されていたことに似ています。現代風に言うと「貼る広告」はプル型、「配る広告」はプッシュ型ということができ、ビラ(広告)の使われ方は、庶民生活のありさまや風俗を物語 っています。
 (1)貼る広告・・・プル型(貼り紙、インターネット・ブログなど)
 (2)配る広告・・・プッシュ型(DMや新聞の折り込みチラシなど)
 さて、かつて風俗街などで見かけたピンクビラですが、名刺サイズほどの大きさのビラに、女性のイメージ写真と業者の電話番号が記載され、人目に付きやすい電柱や標識柱などに貼りつけられているもので、これ自体は、①貼る広告(プル型)といえますが、裏面にちょっとした工夫があります。ビラは裏面の1センチ角ほどの 面積につけられた剥離性の糊によって貼り付けられ、ヒラヒラと風になびくビラを見た人間がこれを剥がしてこっそり持って帰えれるようになっています。このように、ピンクビラは、「①貼る広告」の機能だけではなく、「②配る広告」の要素を取り込むことによって進化しました。これは、デリヘルの利用において、路上の広告 で情報を得る行為とホテルから電話をかける行為が不可欠であることを物語っています。

剥離性の糊の粘着力が非常に強力
 ピンクビラは、この裏面の剥離性の糊の粘着力が非常に強力であるがために、剥がした後も電柱や標識柱の表面に糊が残留したままとなり、これにゴミなどが付着して剥がし跡となって残るという状況を生み出しました。
 渋谷の円山のホテル街の中心部。東電OL殺人事件の被害者のOLが客を引いていた道玄坂地蔵は、この十字路のすぐ近くにあります。

電柱にはおびただしい数のピンクビラ剥がし跡が
 電柱にはおびただしい数のピンクビラ剥がし跡があります。ビラを貼る人間、同業者同士の競合、ビラを剥がして持ち帰る客、環境浄化のためにビラを剥がす人、それぞれのせめぎあいの現場を物語っています。