先月はいろいろと忙しく、勝手に休載してしまって申し訳ないです。さて、今回は早春の静岡に出かけましょう。駿河湾沿いを走る国道150号線のすぐ脇にある「萩間川相良水門」を訪ねます。3扉の大きな防潮水門です。
萩間川相良水門は見てのとおり、屋根に特徴のある一風変わったルックスをしています。一般に水門の上屋の屋根というものは、それほど重要な機能を担っていません。雨漏りしない程度のものが普通についてれば問題ないはずです。積雪を嫌う雪国の水門には、あえて傾斜をつけた屋根がたまに見られますが、ここは静岡県です。しかも積雪のほとんどない海沿い。それなのにまあこのヘビーな屋根、一体どうしたものでしょう。
アップで見るとわかるのですが、この屋根って、本当に単なる屋根のようです。4つの上屋を鋼材でがっちりと連結させてはいるけれど、中に何か秘密兵器などが詰め込まれていたりするわけではありません。静岡県の防潮水門は、東海地震対策によりおしなべて頑丈な設計がなされているのですが、ひょっとしてこの必要以上に立派な屋根が、水門全体の強度アップに貢献しているのでしょうか。
H型鋼がにょきにょきと飛び出してます。木造建築っぽさを狙ったスタイリング上の処理っぽいですね。それにしても、サビがガンガン出てしまってちょっと残念な感じ。海沿いでこの処理は、ちょっとしたかなりの冒険ですな。メンテナンス費用も高くつきそうで、大丈夫か静岡県、などと余計な心配をしてしまいます。
プレートによって水門の名前が違うことはよくあるのですが、ここも「萩間川水門」と「萩間川相良水門」のふたつの銘板が付いてます。しかもややこしいことに、上屋部分「水門上屋」の銘板がまた別で、竣工年が4年もズレています。もしかするとこの巨大屋根、後付けのオプショナルパーツなのかもしれない。
うーん、それにしてもこの無駄に気合いの入った鋼材の飛び出し・・・。「やっちゃった系水門」の認定ボタンを押してしまってもいいですか。台風来たときに屋根飛ばないのか、とかいろいろな心配も頭をよぎります。
上屋は少々肩に力が入ってましたが、メカニズム部分はちゃんと仕事しそうにしています。ゲートの巨大なローラーがむき出しで、実に頼もしい。これならきっとおそろしい津波も軽く受け止めてくれるでしょう。静岡県のみなさんどうぞご安心ください。
個人的にはらせん階段が好きです。だから4本もあってすてき。でもこれだけ大きな屋根が付くのだったら、屋根の中に上屋間をつなぐ通路を作った方がすっきりしたと思うのですけど。ちなみにこの管理橋は一般人は立入できません。侵入しようなどと考えずに、フェンスの外から鑑賞いたしましょう。
水門のあるのは相良の町はずれ。ここから海岸沿いにいくつか水門があるので、次回にかけてたどってみることにします。ところで水門の周辺にはこんな注意看板がつきもので、われわれの目を楽しませてくれます。これをドボク美術と呼んでいるのですが、ドボク美術をたくさん集めて、大きな美術館で企画展示をやるのがわたしの夢のひとつです。
こちらの看板はグラフィック的にはイマイチですが、「滑った感」がよく表現され優れたインスタレーションになっています。
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