びっしり建物が詰まった通りに町家が壊されてできた空き地がポツポツと続く現代の京都の町並み。このダンメンに囲われてぽかんと空いた空き地をニッチと呼んで鑑賞しています。
ダンメンを二面楽しめるお得感、スペースの作られ方、使われ方、そしてニッチに秘めれた京都の裏側など、一粒で二度三度おいしいのがこのニッチなのです。
京町家は“うなぎの寝床”と呼ばれるとおり巾が狭くて奥行きが深い。その極細長さを体感できるのがニッチです。
中には奥が深すぎて反対側の通りまで突き抜けることも。
角地のニッチもこじんまりとしてまたいいものです。
さて、ニッチが空き地のままというのは稀でとりあえず何かに使われています。そしてその再利用のされ方も鑑賞ポイントの一つ。
そのほとんどは駐車場。
稀に公園。
稀に屋台。
そしてつっかえ棒に。
利用するにしてもそこはうなぎの寝床。必ずしも使い勝手がよいわけではない。例えば細長―い駐車場。職人技的な駐車技術が問われる。
家を建て替えるとこの通り。敷地を持て余すにもほどがある。うなぎの寝床と再利用の仕方の齟齬具合を鑑賞するのもニッチの楽しみ方の一つなのです。
三つ目の楽しみ方。それは左右のダンメンを見比べてみること。元はひと連なりの町家なのでダンメンのシルエットは左右で同じはずです。
しかし必ずしも同じとは限らない。そこがニッチの奥深さであり、“なんで?”って考えるのがニッチ鑑賞の楽しみの一つでもあります。この“なんで?”の話はまたおいおい。
- 吉永健一
- キョート*ダンメンロシュツ|勝手不動産/普段観光社
- 建築家。吉永建築デザインスタジオ所属。建築設計のほか建築イベントの開催やリサーチプロジェクトなどを通して知ら
れざる建築の魅力を世に知らしめる活動も行う。