富士見坂
さて前回は御茶ノ水の古書店街に出かけたついでに立ち寄れるというなんともすばらしい立地の坂道を取り上げてみたのですが、今回はある意味、御茶ノ水かいわいとはあまりにかけ離れたイメージのある六本木ヒルズから徒歩5分くらいの場所にある富士見坂を紹介してみたいと思います。
位置的には、六本木ヒルズの南西側にあり、ヒルズの端っこからとある抜け道を通るともしかしたら5分もかからない場所にあり、そこからぐんぐんと西へと下り、外苑西通りにぶつかるところまであるというけっこう長めの坂道となっています。
そして、坂の途中に各国の大使館が三つもあるというところがなかなかめずらしく、国内にある名前のついた坂道ではここだけだろうとも思われます。
記事19saka2写真1

そんなわけで、まずは坂下あたりの景色から見てみたいと思います(写真1)。
手前の道路が外苑西通りで、そこからゆるめの勾配でカーブしながら上っていっているのが、今回の富士見坂です。
道幅はせまくて一方通行になっているようでした。
そして、よくみると左にカーブする手前あたりにルーマニアの国旗が見えているとおり、坂の途中にあった三つの大使館のうちのひとつがちょうど見えていました。
記事19saka3写真2

外苑西通りはご存知の方も多いとは思いますけど、こんな感じでけっこうな大通りです。(写真2)
写真2でいうとこの右側に富士見坂があります。
またこの左側(西側)には、外苑西通りと平行して一本奥に入った道と同じ場所に、かつて笄川という川が流れていてそこを渡るための笄橋がかかっていたそうですよ。(いちおう古地図で確認してみたのですが、ちゃんとありました。あと余談ですがそのかつての橋を渡ると、その西側には「牛坂」という坂道もあったりするんですよ。)
そんなことから、この富士見坂は別名で「笄坂」とも呼ばれていたそうです。
記事19saka4写真3

そして、次はすこし坂を上り、坂上のほうを眺めたものです。(写真3)
洒落た住宅のあいだをゆるやかにカーブしながら上っているという感じですが、実は遠くにあの六本木ヒルズの銀色の森タワーも見えていました。
記事19saka5写真4

さらに坂を上っていくと、今度は同じく六本木ヒルズ内に建っているレジデンス棟が遠くに見えてきました。
なので、こういうわかりやすいランドマークがあるときは場所性がもろに滲みでてくるので、記念に撮っておくことをおすすめします。

ちなみに、新しい景色ばかりでもなんですので一言加えさせていただきますけど、この坂道には都内の坂道の途中によく見かける案内板などはなく、最近の書籍以外には、「府内備考」という古い書物にここが富士見坂と呼ばれていたということが記録されているのみです。
『一坂 幅四間位、登凡三十間程、右町内にて笄橋への道筋にこれあり富士見坂と唱へ申し候。尤、先年は富士山相見え候に付、右の通り唱へ来り候由甲伝へ候』(府内備考より)
記事19saka6写真5

また、もうしすこし坂を上っていくと、途中に「le bein」という知る人ぞ知るギャラリー(ショップ併設の)がありました。
個人的には、おお!こんなところに・・・という感じだったかもです。
(坂道散歩では、こういう偶然見つけたある意味洒落た場所にも臆せず入ってみるというのも楽しみのひとつですので、よかったら試してみてください。)
記事19saka7写真6

坂道はまだまだ続き、こちらはやっと坂の中間地点をすこし越えたあたりまでやってきて坂上のほうを見たものです。(写真6)
写真の右側をよくみてもらうと、ギリシャの国旗が見えているとおり、こちらがギリシャ大使館ということになります。
これで二つ目の大使館ですね。
記事19saka8写真7

さらにてくてくと上っていくと、やっと坂上の頂上あたりが見えてきました。(写真7)
実はこの坂道、写真でも車が渋滞しているとおり、道幅もせまくて勾配もあって抜け道のはずなのにけっこうな交通量で、車がなるべくいない隙に写真を撮るのにひと苦労しました。
記事19saka9写真8

それからふと上空を見上げてみると、こんな2ショットも撮れました。(写真8)
六本木ヒルズも目と鼻の先ですね。
記事19saka10写真9

そしてついに坂上までやってきました。(写真9)
もちろんこちらは坂上から坂下のほうを眺めたものです。
かつてはここから富士山が見えたのかもしれませんが、今はここよりさらに背の高い高層ビルが遠くに見えるのみです。

あと、左側にはラオスの国旗が見えているとおり、坂の途中にあった3つ目の大使館がこんなところにありました。
記事19saka11写真10

で、最後に坂上真向かいで「テレビ朝日通り」と呼ばれる道路沿いに「専称寺」なるお寺の入口がありました。
見た感じはそれほど大きくなさそうな専称寺なのですが、実はここに、あの新選組の沖田総司や織田信長の側室の清心尼のお墓があるそうですよ。
(ただもし見に行く場合は、奥はひっそりとしていて狭いので、一人でこっそり行くことをオススメします。ちなみに僕が行った時は沖田総司の墓は確認できましたけど、清心尼の墓はどれだかわかりませんでした。)

そんなわけで、今回は大使館そばの風景メインで写真を選んだこともあり、視覚的には高低差具合が伝わりにくかったかもしれませんが、坂道自体はけっこう距離も長く高低差もかなりのもので地形図で再確認してみても、15mくらいはありそうな感じで、しかもこれが六本木の繁華街からすぐの場所にあるというのはやっぱり驚くべきことなのかもしれないですね。

住所
港区西麻布3丁目




  • 雲本らて

  • 東京坂道さんぽ

  • 1973年7月、兵庫県(というか神戸)生まれ、♂(男性です)。世田谷区在住。
    現在は「東京坂道さんぽ」というブログを運営しながら、坂道観察などを続けています。