今回は前々回の記事(「アタゴ」とは何なのか?)の続編です。
「アタゴ」という言葉がよくわからない、もしくは東京都港区新橋のそばにある「愛宕」を思い浮かべた方は前々回記事に目を通してもらえると、今回の記事がより一層楽しめると思います。

 おさらいしますと、「アタゴ」というトマソンがあります。これは「なんだかよくわからないけどそこに存在している物体」を指しているのですが、どうやら最近では「何かの意図があって配置した物体なのだけれども、どうも違和感のある物」になっているのではないか、というお話でした。

 そして、その不思議な物体、「アタゴ」がおそらく日本一発見できる町があります。

 そう、それが新宿です。



 新宿三丁目駅と繋がるビルを出ると、立ち上がりに奇妙な突起が配置されています。規則性があるのですが、どうやら後で付け足されたように見えます。何故なら床面と突起物で材質が異なっています。さてこれは一体何か?

 新宿近辺にいる方ならもうお分かりでしょうが、これはホームレスがここに寝るのを防ぐために設けられた突起と思われます。東京でもここ新宿ではやたらめったらと見かけます。



 もう1つ見てみましょう。こちらは新宿二丁目あたりだったかと記憶してますが、ビルのふとした場所にまたもや突起です。



 近寄ってみますと、こちらは先ほどと比べると突起物の量が遥かに多いです。ほぼびっしり、という感じです。

 
 二つの物件を眺めてると、「だからこれはトマソンじゃなくてホームレス居座り防止じゃないの?」という事になるのですが、逆に考えますと、このアタゴ的突起のおかげでどちらの物件も、その空間全てが無駄になってます。

 そもそも腰掛けてもらおう、くつろいでもらおう、という意図で設計された場所ではないのでしょうが、アタゴのおかげで

「本当に何も出来ない場所」

が出来上がっているのです。そして見た目も大変に奇妙。15年ほど前に大々的に行われたホームレス排除の動きからこのような措置が取られたのではないかと思いますが、おかげで実に奇妙な空間が出来上がっております。21世紀型アタゴは突起よりも突起によって発生した無駄な空間の事ではないか?と思われるのです。



 続いては少し異なるアタゴトマソン。新宿西口ヨドバシカメラ近くのビルなのですが、もうヤケクソのように車止めのような物体がびっしりと置かれております。現代芸術、いやこれこそ超芸術トマソンというような眺めです。

 こちらは前々回紹介した物件と同じく、違法駐輪防止のために置かれたのだと思うのですが、ご覧の通り大変残念な風景を生み出しております。

 何故なら、アタゴたちの健闘もむなしく建物の際に駐輪車両がびっしりと連なっていたのでしょう、アタゴの外にカラーコーンで区切られる、という極めて過剰な状態になっています。これではアタゴは本当に無用な存在に成り果てています。二段階斜め上を行くトマソンとでも申しましょうか。こんなに奇妙な状態が年中展開されているあたり、さすがは魔都新宿。



 そしてこの建物の白眉は、建物の周辺全てにアタゴが配置されているところです。

 正面に回ってみてもひたすらびっちりとアタゴアタゴアタゴ。フジツボのような密集具合。建物の持ち主の意地というかヤケというか、壮絶な眺めですので、是非皆様一度ご覧を。


 こんな奇妙な空間があるあたり、新宿は恐るべき町だと思いますが、実は大阪にも更に斜め上を行くようなとんでもない事になっている空間があったので最後にご紹介。



 大阪某所の街角で2年ほど前に目撃したのですが、新宿ヨドバシそばと同じく違法駐輪よけが為されています。こちらはアタゴではないのですが、カラーコーンとトラロープを使って、歩道を塞ぐという実に大胆な手法が取られています。



 角度を変えてみると、歩道に延々とロープを蜘蛛の巣のように張り渡しており、2歳児くらいまでの小さい子しかこの歩道を歩く事が出来ないようになっております。

 しかし駐輪車両は意に介さずとばかりにカラーコーン際に停められ、結局は誰も歩けない歩道を作り出しただけになってしまっているのが哀愁満点でございます。大阪、恐るべし。今もあるのでしょうか、どうなのでしょうか。



 2回に渡って不思議なトマソン、アタゴをご紹介しました。東京在住の方は是非新宿でこの不思議な突起物を探してみる事をオススメします。簡単に見つかりますし、突起によって違和感のある空間が出来ている様は、なんとも言えない気分になります。

 次回はお待たせしました、2回目の投稿トマソン発表でございますのでお楽しみに!投稿も随時受け付けております!!





  • 川浪 祐

  • From Basshead For

  • 1975年生まれ。中学生の頃父親の書棚にあった「超芸術トマソン (ちくま文庫)」を読んでしまい、トマソン探しの人生を送るようになる。元々は音楽やフェスの話などをしていたブログも今ではすっかり路上観察一色。