野球シーズンが近づくと、少し他のことがおろそかになってしまう。2月6日以来の更新ですが、まだ石川県に居りまして。

今にして思うと、上掲の写真がお寺だと気付いたのはなぜか?と思ってしまうのだが、このお寺は石川県松任市の光明寺(真宗大谷派)。JR松任駅から南に500メートルほどの住宅と商家が並ぶ街にある。
なぜお寺と思ったのか?もちろん、地図で場所を特定していたからだが、それだけではなく、一般民家にはないたたずまいを感じるのだ。まず、建物が「人を迎え入れよう」としている。
それから、二階が大きい。何らかの寄合をする施設だということですね。でも最終的には、「光明寺」という表札を見るまではわからない。


こういうお寺、石川県の加賀地方には結構多い。浄土真宗(真宗)が人々の生活に密着しているので、お寺も日常的な顔をしているのかもしれないし、あまりにもお寺の数が多すぎるために、一つ一つのお寺の経済規模が小さいからかもしれない。
光明寺から東へ200mほどの街中にある信誠寺(真宗大谷派)もぱっと見た目ではお寺とは分かりにくい。


でも、このお寺は軒下に小さな鐘がぶら下がっているので、比較的簡単。お寺で使う大きな鐘を梵鐘といい小型のものは喚鐘という。
お寺か他の建築物かわからないような地味寺では、喚鐘は結構決め手になる。
雪国らしく玄関のまわりは覆い屋で囲まれている。信者の人々に少しでも暖かくなってお参りしてもらおうという考えだ。
信誠寺からさらに東に400mほどいった西念寺(真宗大谷派)も、一般民家と紛らわしい。


この寺には喚鐘はぶらさがっていないが、建物の左端に、お寺独特の窓が見える。「花頭窓」といって、もとは禅宗のお寺から始まったが、江戸時代には多くのお寺でこの窓が開けられる用になった。これもお寺のサインですね。


こうして地味ではあっても町にしっくりと馴染んでいるお寺を回るのも、愉しみというもの。
もう一つ、光明寺から西南に500mほどの位置にある浄蓮寺(真宗大谷派)。



豪雪地帯にあるお寺は、瓦の強度を高めるため、塗瓦を葺いていることが多い。しっとりとした風情には欠けるが、カラフルな色をつけることができる。浄蓮寺も、これまで紹介した3つのお寺とよく似た造りだが、えんじ色の瓦にかわるだけで、軽快な印象になる。おそらく、町では「赤い瓦のお寺」と呼ばれていることだろう。
この寺も一見、お寺だとわかりにくいのだが、この種のお寺を何か寺も見てくると、気配だけでお寺だと知れるようになる。これ、地味寺周りの楽しみの一つである。






  • 広尾 晃

  • ふつうのお寺 http://futsu-no-otera.jp/
  • わけあって、今は小さく、目立たないけれど、ずっと法灯を伝えている。そんな小さなお寺を「地味寺」と呼びたい。「地味寺」は、「みすぼらしいちっぽけなお寺」ではなく、誰かの思いに応えるために、時代の風雪に耐えながら生きている、かけがえの無いお寺です。私は全国75,000と言われるお寺を回ることをライフワークにしています。その中から選りすぐりの「地味寺」をご紹介していきます。
    お寺をひたすら紹介するサイト「ふつうのお寺」もぜひご覧ください。