街中にあるいろんな無用の長物、トマソンをご紹介して2年近くが経ちましたが今回は少し趣向を変えて、今まで分類されていないトマソンについて考えてみましょう。
 おさらいすると、赤瀬川原平氏の名著「超芸術トマソン」(ちくま文庫刊)においてトマソンというものはいくつかに分類されております。

 当トマソンカテゴリで今までご紹介してきたものは
・原爆
・高所ドア
・無用庇
・階段
・無用門
・ヌリカベ
・純粋
・植物
・アタゴ
といったものです。


 今回は、そういったものとは異なり、「超芸術トマソン」をはじめ過去のトマソン本において似たようなものは取り上げられていたのですが、明確にカテゴライズされていなかったもの、「開かずの扉」について考えてみます。


 最初の写真は東京都杉並区、荻窪です。私が始めて見つけたのは2007年(『From Basshead For:荻窪開かずの扉』)。非常に面白い、とは思っていたのですが、あまり他ではみないタイプのトマソンでした。

 どういう事でトマソン的なのかと言いますと、ドアがあるのですが、そのすぐ前にはパイプが横に通っています。更に、写真では少々分かり辛いのですがこのドアは蝶番の向きから考えるに外開き、つまりパイプが通っている側にしか開けないのです。

 と、いう事はどういう事か。


「このドアからは出入りできない」


という事なのです。なんたるトマソン。


 当時なかなかに興奮した記憶があるのですが、なにせあまり見かけない。そこでしばらく忘れていたのですが、昨年11月に衝撃が走りました。忘れもしないみちくさ学会初の読者参加企画、第1回投稿トマソン発表!」です。

 
 トマソン界の巨人、吉野忍さんが選考した作品の中にこういう物件がありました。

NPGさん「拘束ドア」


(1)発見者:NPG (twitter:http://twitter.com/N__P__G)
(2)物件の場所:東京、寺島町
(3)発見日時:09年4月11日
(4)発見についてのコメント:童話の、魔法をかけられ動けなくなった騎士、という感じ

吉野 忍さんからのコメント
がんじがらめですね。夏場にくると葉っぱで見落としてしまいそうな。ドアの下に下がっている札のようなものが気になります。

 

コダマさん「パイプ貫通ドア」


(1)発見者:コダマ (Twitter ID: @Tadahiro_Kodama )
(2)物件の場所:西荻窪駅付近
(3)発見日時: 不明
(4)発見についてのコメント:パイプが通された事によりひっそりとドアがお亡くなりに

吉野 忍さんからのコメント
非常に珍しいタイプの無用ドアですね。ドアの「死因」が特殊で唯一無二なところに、この物件の質の高さがあると思います。



 この2件、どちらも「ドアが開かない」という点において共通する無用の長物、つまりトマソンです。しかもかっこいい。更に自分はまだみちくさ学会で取り上げていない。これはまずい。読者の方にいいとこもっていきまくられてしまう。

 と、いう実に器の小ささを感じさせる理由で自分のハートにメラメラと火がつきまして、実際には種火程度だったのかもしれませんが、とにかくそんなこんなであちこちで「開かずの扉」を探して参りましたので一気にご紹介していきます。それぞれ愉快ですよ。


 東京都豊島区、池袋近辺で見つけました。コンビニなのですがドアの前にエアコンの室外機がででんと座ってます。一生開ける気ないんでしょう。



 東京都板橋区志村、居酒屋兼ファミレスの側面にありました。こちらも1枚目と同じく、扉の目の前、パイプが横に通っております。どちらの物件もなんでこういう設備を作ったのでしょうか。避難する時とか大丈夫なんでしょうか。



 神奈川県三浦郡葉山町。お勝手口のようになっておりますが、植物が生い茂り、とてもじゃないけどここからの出入りは難しそうです。

 
 ありそうでない、というところは他のトマソンとも共通するのですが、こちらのタイプはひかけるとちょいとテンションが上がって来る事間違いなし。上がってこなかったらごめんなさい。さぁ身の回りのドアを今一度総点検してみましょう!





  • 川浪 祐

  • From Basshead For

  • 1975年生まれ。中学生の頃父親の書棚にあった「超芸術トマソン (ちくま文庫)」を読んでしまい、トマソン探しの人生を送るようになる。元々は音楽やフェスの話などをしていたブログも今ではすっかり路上観察一色。