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前回のさくらそう水門を実際にご覧になった方は気が付かれたと思うのですが、隣にもうひとつ巨大な水門があって、昭和水門という名前が付けられています。
昭和水門があるのなら平成水門がありそうなものですが、今のところ、そんなビッグでコンテンポラリーな名前の水門は作られていないようで、わたしのアンテナにはかかってきません。では逆に時代を遡ってみると、明治水門というのが宮城県にあるんです。これはぜひ見てみたい!と出かけたのは、ちょうど1年前のこの時期でした。なぜかわたしは、毎年夏になると北上川の下流に行きたくなる習性があります。水量たっぷりの、夏の北上川はいいですよ。これでもし野生のカワウソでも泳いでいてくれれば、もう地上の楽園なんだけどなあ。

JR石巻線は東北本線の小牛田から分かれて、港町の石巻まで延びているローカル線です。涌谷駅を出たディーゼルカーが前谷地駅に着くちょっと前、進行方向の左に大きな青い水門が見えるはず。なにしろまわりはすべて田んぼ。高い建物などまったくありませんので、反対側の席に座ったりしない限り必ず見えます。それからおそらく夜は見えないと思います念のため。

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明治水門は、出来川という支川が北上川水系の江合川に合流するちょっと手前にあるのですが、このように線路側から見えるのは裏側です。何となくくやしいので、ちゃんと表側から撮影しましょう。

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これが表側です。この日は曇っていて助かりました。暑くない、というわけではありません。曇ってても暑いときは暑いです。そうではなくて、曇っていると水門の裏と表、両方撮れるのです。薄曇りがベストコンディション、というのが構造物を撮る場合の鉄則なんです。出来川の護岸はコンクリ張りではなく、石を金網でまとめたいわゆる多自然型護岸になっており、いろんな生物が暮らしていそう。水門の左のゲートの下から、石巻線の鉄橋が見えますね。

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水門にぐっと寄ってみましょう。手前の道路は国道108号線で、ひっきりなしに車が通ります。現在の明治水門は見ての通り、明治時代にできたものではなく、昭和43年にこの近代的なスタイルに改築されたようです(初代の明治水門がまったく今と同じ位置にあったのかどうかは、詳しく調べていないのでわかりません)。列車の音がするので振り返ってみると、意外に長いコンテナ貨物列車が小牛田方面に走っていくところでした。


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  • 佐藤淳一

  • Das Otterhaus

  • 1963年、宮城県生まれ。水門写真家。最近はカワウソばかり撮っている。高いところと水のそばが得意。近著は「カワウソ」(東京書籍刊)。