話を聞くと、たまたま店に銅板があったこと。ホットケーキを焼く技術も持っていたこと、女の子が食べたいと頼んだこと、その一部始終をマギー司郎さんが見ていたこと。いくつもの幸運が重なっていたことがわかる。
周辺の会社が減り始めたタイミングでテレビで頻繁に紹介され、次いで雑誌にと、絶妙なタイミングでランチのお客さんからホットケーキを食べにくるお客さんへとメインの客層が入れ替わったことも幸運だった。時期が重なっていたら、入れないお客さんが出て、成り立たなかったと思うと塩谷さんはいう。
「やっぱり一生懸命やっていれば、ちゃんと見てくれている人はいるんだなって60を過ぎてわかるようになったよ。僕の座右の銘じゃないけど、『継続は力』って言葉は若い頃からずっと頭の中にあったから、とにかく続ければ何か見えると思ってる。
商売の基本は健康なんだよね。ふたりとも、開店以来一度も寝込んだことないの。まず親に丈夫に産んでもらったことを感謝しないといけない。この仕事が好きなんだよね。男っていうのは、やっぱり最後の最後まで仕事してるのが幸せじゃないかなって思うんだよね」
そういって塩谷さんは笑い、最後にもうひとつ大事なことを聞かせてくれた。
「本当に一番大事なのは、話を上手に聞くこと。コーヒーを上手に作るよりも難しい。こういう場所だから特に、みんなカウンターに座る。ひとりで来る。いろんな話をしてくるんだけど、上手に聞くっていうことは、ただ頷くだけじゃダメなんだ。きちっとした相槌を打たなくちゃいけない。そうするにはやはりそれなりの知識を入れておかないといけないわけ。またその知識を見せびらかしてもダメ。聞かれたことに答えらればいい。だから店が開く前に新聞は毎日くまなく読む。本当の秘訣はそこらへんなんだよね。じゃなきゃ、35年以上毎日来る人がいるなんてあり得ないです。話がしたくて話を聞いてほしくて来ている方もいる。三十何年続ける一番のポイントはそこかもね」
継続は力なり。ひとつのことを必死になって続けた者だけが、見えるものがあるのだ。
ホットケーキに賭けた男が最も大切にしていることは、実は通い続けてくれるお客さんに対しての真摯な姿勢だった。
●コーヒーショップ ピノキオ
板橋区大山金井町16-8
03-3974-9336
東武東上線大山駅/地下鉄板橋区役所駅より各徒歩8分
7:30~19:00
第一・第三水曜日定休
ブレンドコーヒー350円
ティ350円
ホットケーキ450円
*
「手仕事」で夢をかなえる女性たち: ものづくりを生業にした24人の物語
著者:塩沢 槙
販売元:淡交社
(2012-03-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
少しみちくさ・喫茶店からは話がそれますが、2012年3月に拙著が発売となりました。
『「手仕事」で夢をかなえる女性たち -ものづくりを生業にした24人の物語-』(淡
交社刊)
本書は、私が数年前から取材をしたいと思っていたテーマのひとつであり、体裁は、モノの紹介の本です。写真たっぷり、文章も長めの本です。けれども、これはモノの紹介の本ではありません。
出てくる人々、それぞれの生き方、夢への近づき方の話。ひとつのことを続けるということは、どういうことなのか。
夢の形はさまざま、小さな夢も夢、大きな夢も夢。いろいろあって、人それぞれ。
夢は簡単に叶わないことがあります。そのことを、どう考えるか、を書いています。
私自身取材をし、話を聞きながら、ようし私もこれからがんばろう、という気持ちになりました。迷ったとき、苦しいとき、前進したいとき、やりたいことをやり続けるためのエネルギーが欲しいときに、少しでもお役に立てたら幸いです。
本の中では、登場するものが買える場所(お店など)の情報も載っています。
気になるものがあったら、町の散策ついでにお店に立ち寄って、という風にみちくさ(まちあるき)にも活用していただけば幸いです。
こじつけっぽくてすみません!
「やっぱり一生懸命やっていれば、ちゃんと見てくれている人はいるんだなって60を過ぎてわかるようになったよ。僕の座右の銘じゃないけど、『継続は力』って言葉は若い頃からずっと頭の中にあったから、とにかく続ければ何か見えると思ってる。
商売の基本は健康なんだよね。ふたりとも、開店以来一度も寝込んだことないの。まず親に丈夫に産んでもらったことを感謝しないといけない。この仕事が好きなんだよね。男っていうのは、やっぱり最後の最後まで仕事してるのが幸せじゃないかなって思うんだよね」
そういって塩谷さんは笑い、最後にもうひとつ大事なことを聞かせてくれた。
「本当に一番大事なのは、話を上手に聞くこと。コーヒーを上手に作るよりも難しい。こういう場所だから特に、みんなカウンターに座る。ひとりで来る。いろんな話をしてくるんだけど、上手に聞くっていうことは、ただ頷くだけじゃダメなんだ。きちっとした相槌を打たなくちゃいけない。そうするにはやはりそれなりの知識を入れておかないといけないわけ。またその知識を見せびらかしてもダメ。聞かれたことに答えらればいい。だから店が開く前に新聞は毎日くまなく読む。本当の秘訣はそこらへんなんだよね。じゃなきゃ、35年以上毎日来る人がいるなんてあり得ないです。話がしたくて話を聞いてほしくて来ている方もいる。三十何年続ける一番のポイントはそこかもね」
継続は力なり。ひとつのことを必死になって続けた者だけが、見えるものがあるのだ。
ホットケーキに賭けた男が最も大切にしていることは、実は通い続けてくれるお客さんに対しての真摯な姿勢だった。
●コーヒーショップ ピノキオ
板橋区大山金井町16-8
03-3974-9336
東武東上線大山駅/地下鉄板橋区役所駅より各徒歩8分
7:30~19:00
第一・第三水曜日定休
ブレンドコーヒー350円
ティ350円
ホットケーキ450円
*
「手仕事」で夢をかなえる女性たち: ものづくりを生業にした24人の物語
著者:塩沢 槙
販売元:淡交社
(2012-03-15)
販売元:Amazon.co.jp
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少しみちくさ・喫茶店からは話がそれますが、2012年3月に拙著が発売となりました。
『「手仕事」で夢をかなえる女性たち -ものづくりを生業にした24人の物語-』(淡
交社刊)
本書は、私が数年前から取材をしたいと思っていたテーマのひとつであり、体裁は、モノの紹介の本です。写真たっぷり、文章も長めの本です。けれども、これはモノの紹介の本ではありません。
出てくる人々、それぞれの生き方、夢への近づき方の話。ひとつのことを続けるということは、どういうことなのか。
夢の形はさまざま、小さな夢も夢、大きな夢も夢。いろいろあって、人それぞれ。
夢は簡単に叶わないことがあります。そのことを、どう考えるか、を書いています。
私自身取材をし、話を聞きながら、ようし私もこれからがんばろう、という気持ちになりました。迷ったとき、苦しいとき、前進したいとき、やりたいことをやり続けるためのエネルギーが欲しいときに、少しでもお役に立てたら幸いです。
本の中では、登場するものが買える場所(お店など)の情報も載っています。
気になるものがあったら、町の散策ついでにお店に立ち寄って、という風にみちくさ(まちあるき)にも活用していただけば幸いです。
こじつけっぽくてすみません!
- 塩沢 槙(しおざわ まき)
- http://www.makishiozawaphotography.com
- 塩沢槙 写真執筆事務所ブログ
- 撮影業・執筆業。1975年生まれ、東京都出身。1999年~2000年ロンドンへ留学。帰国後、大学在学中より仕事を始める。近年は東京の街や文化、日々の生活・暮らしに特に興味を持ち、書籍の制作を中心に活動中。2007年『東京プチ・ヒーリング』、2009年『東京ノスタルジック喫茶店』、2010年
『東京・横浜 リトル・カフェ物語』を河出書房新社より上梓。2011年7月、撮影・執
筆共に手がけた著書4冊目となる『東京ノスタルジック喫茶店2--郷愁の喫茶を訪ね
て』が河出書房新社より発売になり、好評発売中。