わが国において、立小便が、法律上の取締りの対象となったのは、明治初期の違式詿違(いしきかいい)条例においてが最初でした。違式詿違条例は、明治政府が推し進めた文明開化政策の一環として、「外国人に見られても恥ずかしくない国」を建設することを目的に制定されたもので、往来を裸で歩くことや肥桶の運搬、入れ墨や混浴の禁止などとともに、路上での立小便も禁止されました。
違式詿違条例は、現在の軽犯罪法へと発展しました。軽犯罪法第1条26項には、「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者は拘留、または科料に処する。」と立小便が法律違反であることが規定されています。

 禁止看板の文言は、次の2種類に大別されます。

  ①モラルに訴えて禁止させようとするもの
     ・・・・「〇〇はやめましょう。」などと優しく諭すもの。
  ②法律を盾にとって、抑止しようとするもの
     ・・・・「通報する」「罰金」など高圧的な物の言い方で脅すもの。
 

写真2 上の写真(大阪府)は、立小便が男性の局部を人前でさらす行為であることから公然わいせつ罪が成立することを主張し、「現行犯で逮捕する」と脅しています。
 明治以降、政府の狂犬病対策などにより、野良犬は排除され、飼い主に忠実な洋犬が主流となりました。これに伴い、犬の散歩が普及し、路上に放置される小便や大便(これらを単に「犬糞」と呼ぶことにします。)が町を汚すことが問題となりました。特に、犬の小便は、いわゆる”マーキング臭”が強烈で、毎日同じ場所にかけられることにより商店街のアーケードの鉄の支柱が錆びたりする被害が発生しました。そこで、犬糞看板が町のあちこちにあふれることとなりました。
写真3 手作りの犬糞看板の中には、ユニークな力作が数多く見かけられます。ちょっとしたヘンな(間違った)日本語で書かれたものを目にすることもあります。作家の清水義範さんは、著書「日本語必笑講座」の中で、「犬のフンをしないでください。」という犬糞看板をよく見かけるが、正しくは「犬にフンをさせないで下さい」だと指摘しています。犬が糞をするのか、ヒトが犬に糞をさせるのか、興味が尽きないところです。法律では、立小便は軽犯罪法で取り締まられていますが、犬の糞については民法で規定されています。フンをしたのは犬であっても、その責任は飼い主である人間にあります。
写真4






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