「バス停数え唄」の後半は、「六」からスタートです。(前編はこちら
「六」といえば、六本木界隈のバス停が手頃ですが、それでは当たり前すぎるということで、私が選んだのは足立区の[北47]系統にある「六月町」バス停です。前半最後の「五色橋」バス停からの移動が大変ですが、ここは二日目ということで、移動は省略するとしましょう。あえて挑むのであれば、五色橋→[田99]系統→芝浦二丁目→[浜95]系統→東京タワー→[東98]系統→東京駅→[東43]系統→田端駅→[端44]系統→千住二丁目→[北47]系統と乗り継いで、「六月町」バス停に到着というルートが無難(?)でしょうか。
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六月というのも風変わりな地名ですが、古く源義家がこの土地の豪族と戦い、辛くも勝利を収めたのが六月という伝説があるそうです。足立区には他に六町や六木といった地名もあり、「六」とは縁の深い場所のようです。

さて、続いて数え唄の「七」ですが、都営バスには「七」で始まるバス停がひとつしかありませんので、必然的にそこに向かうこととなります。それは、江戸川区の[新小21]系統にある「七軒町」バス停です。六月町→[北47]系統→千住四丁目→[草43]系統→西浅草三丁目→[上26]系統→亀戸駅→[亀26]系統→京葉交差点→[新小21]と乗り継ぎ、「七軒町」バス停に到着です。気が付けば、前半で回った「三角」バス停のすぐ近くですね。こういう出戻り感もこの旅の魅力(?)のひとつです。
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七軒町というのも古くからの地名で、現在の町名ではありません。実は近くに「六軒町」というバス停もあり、放っておけば人々の記憶から忘れ去られていく古い地名が、バス停としてしっかり残っている貴重な事例となっています。そもそも新小岩駅と西葛西駅を結ぶ[新小21]系統は、船堀街道を南北に直進すれば最短距離で両駅間を結ぶことができますが、この「七軒町」バス停付近だけわざわざ旧道に寄り道するような格好になっています。古い地名を残すバス停を守るために、あえて遠回りのルートが取られていると見えるのは、私だけでしょうか。
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続いて数え唄の「八」は、墨田区の[錦37]系統にある「八広」バス停です。[新小21]系統で再び京葉交差点まで戻り、[錦27]系統→錦糸町駅→[錦37]系統と乗り継ぎ、「八広」バス停に到着です。京成線の八広駅がすぐ目の前ですが、バス停は駅前とは表記されていません。こうした鉄道に媚を売らないバス停も、私の好きなバス停のひとつですが、利用者にはかえって不自由かもしれません。八広は昭和40年の住居表示で採用された新町名ですが、周辺の8地区が合併したことに因み、末広がりの縁起の良い地名として考案されたようです。
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これだけバスに乗り続けていると、そろそろ手っ取り早い電車移動に心が惹かれますが、八広駅を尻目にその気持ちをぐっと抑え、次の数え唄「九」となる「九段下」バス停へと向かいます。[錦37]系統で錦糸町駅へ戻り、[都02]系統→伝通院→[上69]系統→大曲→[飯64]系統と乗り継いで、「九段下」バス停に到着です。[上69]系統のところはひと区間のみですので、気分転換に徒歩移動でもいいでしょう。
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九段下については、ここで説明するまでもないでしょう。そろそろ疲れも出始めてきましたので、数え唄最後の「十」へ急ぎます。「十」のバス停としては、「麻布十番駅」や環七通りの十条周辺がありますが、出戻り覚悟で選んだのは「八広」バス停に近い墨田区の「十間橋」バス停です。[飯64]系統で大曲へ戻り、[上69]系統→上野広小路→[上23]系統と乗り継ぎ、浅草を横断して「十間橋」バス停に到着です。「六月町」から数えて15回の乗り継ぎを繰り返した後半の旅が、これで終了します。

バス停から少し歩くと、北十間川に架かる十間橋です。今や屈指のスカイツリー観賞ポイントとして、多くの人がカメラ片手に押し寄せる場所となりました。夕暮れ時のスカイツリーを見上げれば、ここまでの疲れも吹き飛ぶことでしょう。

ということで、前後編の2回に分けてお届けした「バス停数え唄の旅」、いかがでしたでしょうか。一日乗車券2枚(1000円)で合計25回(「五」と「六」の移動も含めれば31回)のバス乗り継ぎでした。こんなことに時間を費やしていていいのか、という自己嫌悪に苛まれることなく、圧倒的な虚無感に押し潰されることもなく、むしろ清々しい達成感を得ることができるのは、きっと私だけではないと信じています。