あなたは街歩き中にこのようなものをみたことがあるでしょうか。これは旧町名さがしにおいて「デンリョク」と呼ばれているものです。
第1回、第2回と、このデンリョクの謎に迫ってまいりました。散々引き延ばしすぎた結果1年以上が経過し政権も変わり、皆様の関心もすっかり無くなってしまったであろうこの企画。今回は最終回、デンリョクの最大の魅力「省略」に迫ります。それと、今回は最後にビッグなオマケ(お詫びと訂正)があるのでお見逃し無く!
デンリョクを語る上で欠かせないのが今回のキーワード「省略」です。省略こそがデンリョクであると言っても過言ではありません。まさに、省略あってのデンリョク。省略の無いデンリョクなんて、チャゲのいない飛鳥みたいなものです。それほどまでにこの省略は、デンリョクにおいて重要な要素であると言えます。ではこの「省略」とは一体何か。
たとえば冒頭の写真のデンリョク。「キリザカ」となっていますが、このデンリョクが示す正式な旧町名は「文京区湯島切通坂町」。「ユシマキリドオシザカマチ」の合計12文字です。この長さでは、あのデンリョク特有のどら焼き型の枠にはとても収まりきりません。しかし町名はできるだけ表示したい。どうしたらいいのか。このようなジレンマを解消すべく、省略という技法が開発されたのです。この「ユシマキリドオシザカマチ」を「キリザカ」に変換する事こそが「省略」です。そのまんまです。
様々なデンリョクを目にして分かったのが、デンリョクは全て「5文字以内」であるということです。デンリョクはどうやら「2文字以上5文字以内」に収めなければならないというルールがあり、この制約の中で、デンリョク担当者各々が自分のセンスと情熱をこの省略にぶつけているのです。
しかし、省略スキルが一定のレベルに達するのには担当者に相当の修練とセンスが求められます。省き過ぎては行けないのは当然ですが、かと言って規定上五文字に収めなければならない。五文字いっぱい使うと文字が小さくなってしまい、スマートさを損なってしまう。担当者にはそれこそ血の滲むような苦悩や葛藤があったことでしょう。それでは、担当者の努力の結晶、素晴らしい省略の世界をご覧ください。この省略の苦労が各デンリョクの文字から垣間見えるはずです。
①ヤナハツ(台東区谷中初音町)
谷中と初音、2つの要素をバランスよく配合されています。語感も良く、思わず口ずさんでしまいますね。ツが大きいのが気になります。
②ネリミナ(練馬区南町)
町名は南なので本来であれば「ミナミ」でいいはずですが、他の地域でも「南町」は多い事による配慮として掟破りの区名を登場させたのでしょう。しかし、練馬区は元板橋区で、板橋区時代は練馬南町でしたのであながち間違いではないはずです。板橋区練馬南町の写真は、私のブログからご覧いただけます。貴重です。
③マツバ(台東区松葉町)
ツが大きいのが気になります。
④サンナミ(台東区谷中上三崎南町)
谷中の要素はまず残したいと思うところですが、それは浅はかな素人考えでしょう。「上三崎北町」も存在する事を踏まえた上での南残し。②の「ネリミナ」と違って「ナミ」を残したのは評価が分かれるところ。三を音読みさせるとこがハイセンスです。
⑤タチヨ(千代田区神田多町)
ヨが大きいのが気になります。小文字のはず。
⑥ロツク(台東区浅草公園六区)
ツが大きいのが気になります。小文字のはず。
⑦ツツミ(台東区浅草日本堤)
ツが
⑧ニポリ(荒川区日暮里町)
ツ入れろよ!
デンリョクの第2回記事において、「デンリョク未発見地域の漢字予測」を行いました。その後の調査で発見できた地区が現れましたのでご報告を行うとともに、予測を外した事に付きまして、深くお詫び申し上げます。今後は心を入れ替えて、残りの世田谷区および足立区のデンリョク発見に邁進するとともに、みちくさ学会への寄稿頻度の向上に努めてまいります。
[今回紹介した旧町名(消滅年/現町名)]
・文京区湯島切通坂町(昭和40年/文京区湯島)
・文京区駒込東片町(昭和39年/文京区西片など)
・台東区谷中初音町(昭和41年/台東区谷中)
・練馬区南町(昭和38年/練馬区桜台など)
・台東区松葉町(昭和41年/台東区松が谷)
・台東区谷中上三崎南町(昭和41年/台東区谷中)
・千代田区神田多町(昭和41年※1丁目のみ消滅)
・台東区浅草公園六区(昭和40年/台東区浅草)
・台東区浅草日本堤(昭和41年/台東区日本堤など)
・荒川区日暮里町(昭和41年/荒川区日暮里など)
・江東区南砂町(昭和42年/江東区南砂)
(1)デンリョク=省略
デンリョクを語る上で欠かせないのが今回のキーワード「省略」です。省略こそがデンリョクであると言っても過言ではありません。まさに、省略あってのデンリョク。省略の無いデンリョクなんて、チャゲのいない飛鳥みたいなものです。それほどまでにこの省略は、デンリョクにおいて重要な要素であると言えます。ではこの「省略」とは一体何か。
(2)省略とは
たとえば冒頭の写真のデンリョク。「キリザカ」となっていますが、このデンリョクが示す正式な旧町名は「文京区湯島切通坂町」。「ユシマキリドオシザカマチ」の合計12文字です。この長さでは、あのデンリョク特有のどら焼き型の枠にはとても収まりきりません。しかし町名はできるだけ表示したい。どうしたらいいのか。このようなジレンマを解消すべく、省略という技法が開発されたのです。この「ユシマキリドオシザカマチ」を「キリザカ」に変換する事こそが「省略」です。そのまんまです。
(3)文字数制限の美学
様々なデンリョクを目にして分かったのが、デンリョクは全て「5文字以内」であるということです。デンリョクはどうやら「2文字以上5文字以内」に収めなければならないというルールがあり、この制約の中で、デンリョク担当者各々が自分のセンスと情熱をこの省略にぶつけているのです。
しかし、省略スキルが一定のレベルに達するのには担当者に相当の修練とセンスが求められます。省き過ぎては行けないのは当然ですが、かと言って規定上五文字に収めなければならない。五文字いっぱい使うと文字が小さくなってしまい、スマートさを損なってしまう。担当者にはそれこそ血の滲むような苦悩や葛藤があったことでしょう。それでは、担当者の努力の結晶、素晴らしい省略の世界をご覧ください。この省略の苦労が各デンリョクの文字から垣間見えるはずです。
(4)めくるめく省略の世界
①ヤナハツ(台東区谷中初音町)
谷中と初音、2つの要素をバランスよく配合されています。語感も良く、思わず口ずさんでしまいますね。ツが大きいのが気になります。
②ネリミナ(練馬区南町)
町名は南なので本来であれば「ミナミ」でいいはずですが、他の地域でも「南町」は多い事による配慮として掟破りの区名を登場させたのでしょう。しかし、練馬区は元板橋区で、板橋区時代は練馬南町でしたのであながち間違いではないはずです。板橋区練馬南町の写真は、私のブログからご覧いただけます。貴重です。
③マツバ(台東区松葉町)
ツが大きいのが気になります。
④サンナミ(台東区谷中上三崎南町)
谷中の要素はまず残したいと思うところですが、それは浅はかな素人考えでしょう。「上三崎北町」も存在する事を踏まえた上での南残し。②の「ネリミナ」と違って「ナミ」を残したのは評価が分かれるところ。三を音読みさせるとこがハイセンスです。
⑤タチヨ(千代田区神田多町)
ヨが大きいのが気になります。小文字のはず。
⑥ロツク(台東区浅草公園六区)
ツが大きいのが気になります。小文字のはず。
⑦ツツミ(台東区浅草日本堤)
ツが
⑧ニポリ(荒川区日暮里町)
ツ入れろよ!
(5)おまけ(お詫びと訂正)
デンリョクの第2回記事において、「デンリョク未発見地域の漢字予測」を行いました。その後の調査で発見できた地区が現れましたのでご報告を行うとともに、予測を外した事に付きまして、深くお詫び申し上げます。今後は心を入れ替えて、残りの世田谷区および足立区のデンリョク発見に邁進するとともに、みちくさ学会への寄稿頻度の向上に努めてまいります。
区名 | 漢字予測 | 結果(25年5月時点) |
江東区 | 江戸川 | 江東 |
墨田区 | 江戸川 | 江東 |
豊島区 | 大塚 | 大塚 |
板橋区 | ? | 池袋 |
練馬区 | 阿佐ヶ谷 | 池袋 |
世田谷区 | 大田 | — |
足立区 | 千住 | — |
江戸川区 | 江戸川 | 江戸川 |
[今回紹介した旧町名(消滅年/現町名)]
・文京区湯島切通坂町(昭和40年/文京区湯島)
・文京区駒込東片町(昭和39年/文京区西片など)
・台東区谷中初音町(昭和41年/台東区谷中)
・練馬区南町(昭和38年/練馬区桜台など)
・台東区松葉町(昭和41年/台東区松が谷)
・台東区谷中上三崎南町(昭和41年/台東区谷中)
・千代田区神田多町(昭和41年※1丁目のみ消滅)
・台東区浅草公園六区(昭和40年/台東区浅草)
・台東区浅草日本堤(昭和41年/台東区日本堤など)
・荒川区日暮里町(昭和41年/荒川区日暮里など)
・江東区南砂町(昭和42年/江東区南砂)
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- 旧町名をさがす会
- 1983年生まれ、福島県出身。東京都内に残る旧町名を探しまわり、(ほぼ)毎日1町名ずつブログにて紹介しています。ネタ切れまで頑張ります。みなさんからの旧町名発見情報や、ちょっとあの旧町名探してこいや的なご依頼等お待ちしています。名前は新宿区十二社(じゅうにそう)から。