写真1
『鍾馗』と聞いて姿かたちをイメージできる人は、そう多くないと思います。
これまで筆者が知人に尋ねた範囲でも、知っていた人はゼロ。
悲しいことに、パソコンに「しょうき」と入力しても「鍾馗」はでてこないので広報活動も、
まずはIME辞書登録してもらうところが出発点という、マイナーの極み。

由来や歴史など、詳しい話は後の機会に譲るとして、ご覧のような瓦製の鍾馗さんが
民家の軒に置かれているのを、関西を中心とした地域で見ることができます。
※京都では鍾馗のことを親しみを込めて「鍾馗さん」と呼び慣わしているため、以降この呼び方を使います。

瓦鍾馗の魅力

なぜ「鍾馗さん」?という問いへの答えは難しいのですが、
答えは二つあると思っていて、一つは探すこと自体の「宝探し」としての魅力。
町をきょろきょろしながら歩き回り、鍾馗さんを見つけたらそそくさと写真を撮っているだけなのですが、気分はすっかり荒野を行く狩人。
獲物の情報が少ないほど狩人が燃えるのは、ここを覗いていただいている皆様にもある程度ご理解いただけるのではないかと思います。

もう一つは鍾馗さんのバリエーションの多さ。
とにかくいろいろな姿の鍾馗さんが、細道を分け入っていく探索人を待っていてくれるのです。

百聞は一見に如かず。第一回は筆者お気に入りの鍾馗さんを何体か紹介することにします。

写真2愛知県名古屋市南区笠寺町
雪男みたいですが、素朴で力強い造形と丁寧な細部の仕上げ。爪楊枝みたいな剣がご愛嬌。

写真2滋賀県野洲市木部町
技巧派の極み。近江八幡を中心とした地域には、極めて水準の高い鍾馗さんが見られます。

写真2奈良県斑鳩町龍田
奈良県は瓦鍾馗の宝庫。この鍾馗さんは素朴系の代表選手で、作者の人柄まで感じられます。

写真2兵庫県伊丹市北伊丹
この鍾馗さんも鬼師の腕の確かさを感じさせる。このあたりが鍾馗さんを見られる西限です。





  • Kite

  • 鍾馗を尋ねて三千里

  • 鍾馗博物館

  • 愛知県在住の会社員、1961年生まれ。
    週末のたびに関西方面へ遠征し、民家にひそむ鍾馗さんに望遠レンズを向けてます。
    不審尋問には笑顔とポケット版鍾馗ファイルで対抗するも、追い払われることもしば
    しば。