毎日暑いですね。これまで鉄道の車窓から見える水門をご紹介してまいりましたが、水門が見える公共交通機関はもちろん鉄道に限りません。
水門がある川につきものの交通機関といったら? そう!渡船です。というわけで今回は、涼しい川風に吹かれつつ、渡船に乗って眺める水門を訪ねます。

大阪には、船がむっちゃ通るので橋が架けられない川があちこちにあります。車は遠回りすりゃいいけど歩行者は困るよね、ということで、主要なポイントには大阪市営の無料の渡船があることは、街歩き好きの読者のみなさんなら先刻ご存知でしょう。そのひとつである木津川の落合上渡船に、だまされたと思って乗ってみてください。

ほら、遠くに見えるでしょ? え?ゴルフ練習場じゃないですよ。水門ですよ水門。かっこいい水門が見えませんか?

ひょっとすると今までお見せした水門とあまりに形が違うので、水門に見えないかもしれません。この右側の木津川水門は、湾曲したゲートを回転させて高く持ち上げ、巨大なアーチにして船に当たらないようにしたタイプの水門で、「バイザゲート」と呼ばれるものです。西洋の甲冑や、オートバイのヘルメットに付いてるバイザと同じように動くので、ちょっと想像してみてください。高潮が来そうなときは、このバイザが降りてきて海水が遡上するのを止めます。ちなみにこういう仕事をする水門を防潮水門といいます。

なにしろ橋が架けられないぐらいですから、ゲートが垂直に上下するような普通の水門なんて作れません。ものすごい高さになってしまうからです。観音開きタイプの水門にする選択肢もあるのですが、川のぎりぎりまで建て込んだ大阪の市街地にそんなもん作るのも無理。そういった問題をクリアするためのバイザゲートです。木津川水門はご覧の通り緑色ですが、大阪には他に青と赤のバイザゲートもあって、合わせて「RGBバイザ三兄弟」です。橋下知事の推進する「大阪ミュージアム」に選定されたそうなので、大阪名物・巨大水門として今後、注目度がアップしそうです。この機会にぜひ3か所とも回ってみてください。そして帰りには海遊館に寄って、カワウソを見ましょう!

さて、木津川水門の左にもうひとつ、水門があるのに気付いたあなたは実にお目が高い!こちらの三軒家水門は「走行式スルースゲート」といって、実はバイザゲート以上の激レアなタイプの水門です。実に大袈裟な名ですが、要するに引戸です。堤防に引戸を設ける「陸閘」というタイプの水門は日本中にありますが、川そのものを引戸で仕切っちゃう水門はとても珍しいもので、ひょっとすると日本ではここだけで見られるものかもしれませんよ。


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  • 佐藤淳一

  • Das Otterhaus

  • 1963年、宮城県生まれ。水門写真家。最近はカワウソばかり撮っている。高いところと水のそばが得意。近著は「カワウソ」(東京書籍刊)。