前回、換気口と切っても切れないものとしてコインパーキングを紹介したが、もうひとつ換気口鑑賞に欠かせないものを紹介したい。何を隠そうラブホテルである。
実はラブホテルは良い換気口物件である確率がひじょうに高い。
恐らく稼働率や人件費の関係だろうが、地上30階などという超高層ラブホテルは基本的に存在せず、大体が6~10階建てという換気口鑑賞的にはジャストサイズの高さ。
また(例外はあるものの)ラブホテルには大抵窓が無い。恐らくのぞき防止、あるいは趣味人の方が他人に見えるようなところで営むことを防ぐという意味なのだろうが、これにより室内の換気は必然的に換気口に頼らねばならなくなる。その結果、尋常ではない量の換気口がついたラブホテルがそこかしこに見受けられるようになる。
更には都会の真ん中のラブホテルであっても駐車場が併設されているケースが多く、撮影ポイントにも事欠かない。ラブホテルは極めて優良でハズレの少ない換気口物件なのだ。

以前にも書いたとおり、良い換気口物件というのはお台場や幕張のような近年開発された地域には無く、また雑司ヶ谷など住宅街にも無い。五反田、日暮里、大森、新横浜といった中層のビルやマンションの立ち並ぶ中途半端な都会にこそそれはあり、そしてそのような地域には、付き物のようにラブホテル街がある。

ラブホテルというのは、条例等の立地規制の関係で、一定区域内に所謂ラブホテル街を形成することが多く、郊外においては幹線道路沿い、ターミナル駅に於いては駅から少しはずれたあたり、中途半端な都会では駅前に、ラブホテルが密集する地域が存在する。

中途半端な都会で、ラブホテル街をうろつけば、一網打尽で良い換気口物件が見つかると言う方程式である。

しかし、換気口を鑑賞してまわるということ自体が、常に建物を下からキョロキョロ見渡す作業で怪しいことこの上ないところ、ラブホテル街をカメラ片手にうろつくのは不審者以外の何物でもない。自分でもよく今まで無事に趣味を遂行出来ていると思う(もしかして探偵だと思われているのだろうか。ただ大っぴらにカメラ持った探偵はいないと思うが)。

最近はデートホテルやカップルズホテルなどというしゃらくさいネーミングで開かれたイメージが強調されつつあるが、まだまだ歩いていて後ろめたい気持ちになることの多いラブホテル街。私が連行されぬよう無事を祈っていてほしい。

新横浜のラブホテル物件






  • 前川ヤス

  • がらり~換気口鑑賞団 

  • 1972年生まれ北海道出身。2007年春頃、電車の車窓から見える換気口配列の美に魅せられ、「日本に一人しかいない趣味(タモリさん認定)」換気口鑑賞を始める。一児の父。