まちを歩けば坂道があり、そのむこうには海があります。
海が見える坂道といえば映画やドラマ、CMのワンシーンなんかで気にかけていれば、以外とよくみかけることが多いのでなんとなくイメージくらいはできるかたもいるかもしれません。ただ、そういう海の見える風光明媚な坂道は東京以外の他府県にあることが多くて、都内の坂道でそういう場所を探すのはひと苦労というよりほとんど不可能・・・。あとは妄想でカバーするしかありません。(笑)
なので、都内で海が見たくなったら、近場の高層ビルの展望台やら、湾岸の有名スポットなんかに行かないと見れないのが現実です。でも昔は東京のまちのいたるところ、とりわけ坂道からもそんな景色が見える場所がいくつかあったんですよ。


まずそのひとつとして、東京には江戸時代から潮見坂または汐見坂という具合に意味は同じで“しおみ坂”という名称がつけられた坂道がいくつか存在します。今のところ六つか七つほどの潮見坂があるそうで、これらの坂道を地図で調べてみると、ほとんどが東向きに下る坂道のようです。かつては坂を歩きながらその遠景に今の東京湾の海を眺められた場所にこうした名前がつけられたわけですが、現在はどの潮見坂からも海を眺めることはできません。

そんなわけで今回はいくつかの潮見坂でもとりわけ異彩をはなっていた皇居内にある潮見坂に足を運んでみました。(一枚目と二枚目の写真です。)
この坂は驚くべきことに皇居東御苑内の白鳥濠の北側にあり、本丸と二の丸をつなぐための坂道だったそうです。かつては日比谷入江が今の皇居前広場近くまで入り込んできていたため海がすぐそばにみえたことから汐見坂(別名で潮見坂、塩見坂ともいうそうです)という名がつけられましたが、今は例にもれず海を想像させるものはなにひとつありません。ちなみに現在の坂道はとにかく静かで広々としていて、両側に立派で強固な石垣(これが本物の石垣ですね)がそびえたち、遠くには海のかわりに丸の内の高層ビル群が見えていました。

 
それから潮見坂と同じように、坂からみえる風景にちなんで名付けられたものとして、富士見坂や江戸見坂なんてよばれる坂道があります。
富士見坂についてはまた別の機会に任すことにして、今回は江戸見坂についてすこしばかりふれておこうと思います。
といってもあまり説明することもなく江戸見坂という名前のとおり、坂名は江戸時代に名付けられたもので坂から江戸のまちが見渡せたことからそういう名前がつけられたというわけで、現在は三つか四つくらいの同名の坂道があります。

そんないくつかある江戸見坂の中で、すこし気になった坂として港区虎ノ門にある江戸見坂があります。(四枚目の写真です。)
今はビルに囲まれて“江戸見”なんて言うのがはずかしいくらいの風景がひろがっています。ただ坂道自体に目をむけると勾配具合もけっこう急なままなんともいえない具合にカーブしていて、ちょうど坂道に隣接してホテルオークラがあり、坂下のほうでは上記の坂とは別の潮見坂とつながっていたりして、坂としてのポテンシャルはなかなかのものかもしれませんよ。





  • 雲本らて

  • 東京坂道さんぽ

  • 1973年7月、兵庫県(というか神戸)生まれ、♂(男性です)。世田谷区在住。
    現在は「東京坂道さんぽ」というブログを運営しながら、坂道観察などを続けています。